「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

試合後、ミックスゾーンは浦和の赤色にジャックされた [J31節浦和戦レビュー] 藤井雅彦 -1,509文字-

 

浦和レッズの出来の良し悪しついては、正直言ってわからない。間違いないのは興梠慎三の負傷離脱がとてつもなく大きな戦力ダウンで、代役を務めた李忠成とはタイプが違うということ。興梠のポストワークは日本人屈指のハイレベルを誇り、李はどちらかというとゴール前で力を発揮するストライカータイプの気質を持つ。以前のゲームでも興梠に対して中澤佑二や栗原勇蔵が手を焼く場面はたびたび見られており、この試合ではそれがなかった。浦和の攻撃にはリズムとテンポが生まれず、前日に試合を行ったガンバ大阪が引き分けに終わったことも消極的なサッカーになった要因の一つだろう。

4-3-2-1_ファビオボランチ そういった相手の事情があるにせよ、マリノスのパフォーマンスは悪くなかった。前半に中村俊輔の負傷交代というアクシデントに見舞われたが、チーム全体のバランスは崩れなかった。決定的な仕事こそできなかったが、藤本淳吾は周囲の選手とともにパスワークの一端を担う。2列目に戻って本来の良さを発揮した佐藤優平が「後半はウチのペースだったと思う」と手ごたえを口にしたように、強力なゴールゲッターがいれば先制したのはマリノスだったかもしれない。

しかし、それができず逆にワンチャンスを決められてしまった。失点の直前のプレーで自身のクロスがゴールラインを割ってしまった小林祐三は「あのプレーのあとだったから、嫌な流れというかリズムだった」と悔やむ。相手にセカンドボールを拾われ、そこから再度に展開された。ボールを持った関根貴大は中へのカットインを選び、その瞬間にマリノスの選手たちは人を捕まえることに注力。3列目から上がってきた阿部勇樹だけ捕まえ切れず、フリーでシュートを打たれてしまった。そのこぼれ球が再び関根の足元にこぼれてくるのだから、この日のヒーローは彼だったのだろう。

マリノスに決定機らしい決定機はなかったが、ゴールになるかもしれないシーンはいくつかあった。前半に佐藤が抜け出した場面、下平匠のクロスを途中出場の藤田祥史が頭で合わせた場面、そして後半ロスタイムに藤本淳吾が直接FKを狙ったシーンなど。いずれもあと少し力があれば、ゴールネットが揺れても不思議ではなかった。でも、それを達成できないのが現状で、ドリブル突破をゴールに結びつけられない齋藤学は「自分たちの力不足」と肩を落とした。

 

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浦和3-4-2-1この日の敗戦で、すでに消えていた優勝だけでなく、3位以内にも手が届かない。4位に順位を上げることもほぼないだろう。つまり来季のACL出場権獲得の望みを絶たれた。これは、今季の失敗を意味する。一昨年のようにリーグ戦終盤を右肩上がりで終えられれば違うが、いまはそういった状況ではない。勝っても、負けても、引き分けても、もういまのチームの限界は見えている。言葉を選ぶのならば、監督人事も含めた転換期に差し掛かっている。

試合後、ミックスゾーンは浦和の赤色にジャックされた。両チームの選手と担当記者が一堂に会すスペースは、気が付くと真っ赤に染まっていた。その結果、マリノスの選手と担当記者は肩身の狭い思いをしたが、「それは仕方のないこと」(栗原)。トリコロールのプライドを持つ者ならば、変わらなければいけないタイミングだ。

 

 

 

 

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