「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

指揮官のナビスコカップ仕様はまったくブレなかった [ナビスコ6節新潟戦レビュー]

 

序盤にあっけなく失点したことで、非常に苦しい展開となった。タッチライン際で相手選手と応対した下平匠は、距離を近くに取りすぎたか。あれではスピードを生かして縦に仕掛けられたときに後手を踏む可能性がある。小林祐三のように走力に自信のある選手なら問題ないが、下平が持つ粘着性ではああいった失点を招いてしまう。あの位置までえぐられた時点で両CBや逆SBの三門雄大、あるいはGK榎本哲也はほぼノーチャンスだ。

失点に気落ちすることなく前へ出たことは評価できるが、具体的な方策は皆無に等しかった。直近のリーグ戦から先発を7選手変更し、いわゆるナビスコカップ組中心の編成となった。そこに組み合わせの妙など存在しない。大きく変わらないメンバーなのに起用されるポジションは試合ごとに異なる。それはリーグ戦に出場する主力選手を優先起用しているからだ。たとえば先週のアビスパ福岡に栗原勇蔵や小林祐三が出場し、この日の先発には中澤佑二と下平匠がいた。彼らのスタートポジションを固定すると、どうしても選手の絶対数が足りないポジションが出てくる。

アルビレックス新潟では、三門雄大がボランチではなく右SBで先発した。適性がないわけではないが、三門をこの位置で起用するメリットは攻撃性にある。迷うことなく縦にランニングを仕掛け、鋭いクロスを供給する。仕事はその一点に集約される。逆に守備面やビルドアップを求めるには、彼自身の意識も練習量も足りない。これまでの起用法がそうだったように、ビハインドの状況を追いかける場面ならば三門の右SB起用には意味がある。ただし先発では実効性に欠けるようだ。

 

 

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 同じように中島賢星のボランチ起用にも無理があった。福岡戦後にエリク・モンバエルツ監督は「(中島について)彼は中盤の一列下がったポジションでもプレーできる」と述べていたが、それはレベルを考えなければの話だ。運動量とボール関与への意識が決定的に足りず、ポジショニングも不安定だった。仕方ないことだろう。彼はトップ下の選手であり、昨季の開幕前は高卒ルーキーながらけが人続出の1トップの位置で起用されていた。これでボランチも高いレベルでこなせる選手ならば、負傷離脱とは関係なく現在の立ち位置ではない。三門の右SB起用以上に苦しい配置だったと言わざるをえない。

しかしながら、すべてはリーグ戦で勝利するためである。そう割り切って考えるならば、この先発メンバーと配置、あるいは決めていたかのような途中交代にもしっかり頷ける。勝てばノックアウトステージ進出に大きく前進する新潟戦でも、指揮官のナビスコカップ仕様はまったくブレなかった。その上でグループ最終節まで自力突破の可能性を残しているのだから、選手たちは奮闘している。個人に目を移しても、仲川輝人はプロ初ゴールを挙げたことで一皮むける可能性がある。

これらは指揮官の手腕とは言い難いが、結果的に功績となる。そしてリーグ戦で結果を残してこそ、称賛されるのだろう。

 

 

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