「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

残っているのは背番号10の左足だけ [1st第2節福岡戦レビュー]

 

試合前、選手の誰もが勝ち点3の必要性を訴えていた。開幕戦でベガルタ仙台に敗れ、第2節は昇格組のアビスパ福岡と対戦する。当面の目標を『残留』に設定している相手と戦い、アウェイとはいえ勝利しなければいけなかった。

 しかし結果はようやくの勝ち点1獲得にとどまり、ここまで2試合を終えて勝利がない。これは内容こそ違えどもスタートダッシュに躓いた昨季とまったく同じ滑り出しで、結果として1stステージのタイトル獲得はかなり厳しくなった。この2チームに勝てないマリノスが、残り14試合で破竹の連勝劇を見せるとは思えない。発表が待たれる新外国籍選手が大爆発したとしても、だ。

福岡戦を見るかぎり、仙台戦からの上積みは皆無に等しかった。先制点を許してから、引いた相手を押し込む展開はほぼ同じ。それなのに相変わらず決定機をまったく作れない。1トップの伊藤翔はほとんどボールが収まらず、攻撃のけん引役を担うはずの齋藤学は深い森に迷い込んでしまったようだ。右MFで先発起用された前田直輝は前半のみで失格の烙印を押され、指揮官が提唱する「素連動したスピードあるコンビネーション」など夢のまた夢に終わった。

 

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 そしてチームは、またしても中村俊輔に助けてもらった。中澤佑二の言葉を借りるならば「シュンにおんぶに抱っこ」の状態である。背番号10の独力で勝ち点0が勝ち点1に変わっただけ。残念ながら個の力に頼っただけのサッカーで、昨季からまったく成長がない。それではアデミウソンが抜けた分、弱くなるのも当然だ。いくらすごいと言っても、中村の直接FKは毎試合決まるわけではない。負けなかったことを良しとする前に、勝てなかったことを嘆かないといけない。

出来が良かった選手を見つけるほうが難しい。だが、選手を代えようにも駒が圧倒的に不足している。いまのマリノスはガンバ大阪や鹿島アントラーズのように豊富な戦力を持ち合わせているわけではない。たとえば1トップのポジションは、伊藤以外にスターターが見つからない。富樫敬真にそれを求めるのは酷だ。この試合での指揮官の采配は悪くなかったと思うが、あれ以上に効果をもたらす采配は難しい。

これまでのマリノスは、チームとしての完成度の低さを個々の能力の総和で補っていた。たとえば守備の踏ん張りであり、オフェンスでの一芸がそうだ。中盤でも個人の技術やボール奪取能力で互角以上に渡り合っていた。しかし、それらがなくなったとき、チームには何もない。残っているのは背番号10の左足だけなのか?

まだ2試合終わっただけ、と悠長に構えている余裕などない。チームが抱えている問題は想像以上に深刻で、根深い。

 

 

 

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