「(昨季は)本当に中途半端なプレーをしていました。『これで正しいのかな?』とか自分の中で戸惑いながらサッカーをしていたんです」 [井上健太インタビュー(後編)]
【井上健太選手インタビュー(後編)】
実施日:4月5日(金)
インタビュー・文:藤井 雅彦
→前回から続く
先日のセレッソ大阪戦に途中出場し、ついに今季リーグ戦初出場を飾った井上健太の独占インタビュー後編だ。
苦しみ抜いた2023年、暗闇の中を彷徨っていた彼に手を差し伸べたのは、同じように出場機会に恵まれず、もがいている一人の先輩選手だった。
弱音を吐ける存在が近くにいたことで、強く結ばれた絆がある。
リハビリと悩みの時間を終え、ついにピッチに戻ってきた背番号17。
復活を告げる咆哮の先に、杉本健勇がいるはずだ。
(昨季は)本当に中途半端なプレーをしていました。「これで正しいのかな?」とか自分の中で戸惑いながらサッカーをしていたんです。
――思い描いていた内容や結果には程遠かったかもしれませんが、昨季の開幕から8試合連続で試合出場し、そのうち2試合に先発しました。新加入選手のシーズンの入りとしては、まずまずのスタートだったのでは?
「チームにない個性を自分が持っていると評価してもらって試合に出ていたと思います。ただ、肩の手術をした影響でキャンプは全体練習にほとんど合流できていない状況から開幕前に復帰しました。コンディションが上がってくる途中で、新しいチームの戦術や周りとの連係も含めて、あまり手ごたえを感じていない状態だったのが本音です。
当時は(宮市)亮くんがリハビリ中でウイングの駒が足りていないチーム事情もあったと思いますが、自分にとってはいきなり訪れたチャンスだったはず。それなのに自分がイメージしているパフォーマンスを発揮できない現実があって、その理由を探すというか、気持ちのどこかで逃げていたのかもしれません。ここでの躓きが昨年1年間に響きました」
――シーズン全体ではリーグ戦13試合出場0得点という成績でした。目に見える結果を残せない難しさに直面した時間だったのでは?
「難しさではなく、その部分が明確に足りませんでした。ゴールやアシストといった最後の詰めの部分の課題を克服できなかったのが僕の2023年だったと思います」
――最後のところで殻を破れなかった?
「結果を出さないと試合に出続けられないという厳しさを突き付けられて、それに気付くまでが遅かった。ファン・サポーターのみなさんからの印象も同じだと思うけれど、ゴールを決めた選手は評価されるし、愛されると思います。それに早く気付いて、もっと貪欲になれればよかったのに、チームとしてボールを大事にする部分にも貢献しようと考える自分もいて、どっちつかずでした。すべてを高いレベルでこなせるのが理想ですが、結局は中途半端でした」
――結果に対する貪欲さは、これまでのキャリアであまり意識しなかった部分ですか?
「大分トリニータではウイングバックのポジションをやっていて、数字を求められることがあまりなかったかもしれません。過程の部分を評価してもらっているところがあって、自分が縦にボールを運んでチームとして崩せているから得点になっているよね、と。もしかしたら、そこに逃げていたというか、ゴールやアシスト以外でも関与できていればOKというメンタルだったかもしれません。でも、F・マリノスでは自分が比較されるのはブラジル人選手たちのケースが多くて、彼らはスペシャルな能力を持っています。より高いレベルの中で目に見える結果や数字を求められて、その期待に応えられないもどかしさや迷いがありました」
――プレーの中に迷いがあった、と。
「チームのスタイルやゲームプランの中で自分の長所をどうやって出すか。できないものはできないと割り切って、自分の特徴だけは絶対に出すというエゴやギラついた部分が足りなかったかもしれません。本当に中途半端なプレーをしていました。「これで正しいのかな?」とか自分の中で戸惑いながらサッカーをしていたんです。自分の持ち味は勢いなのに、ドリブルで仕掛けたあとに奪われてカウンターを食らった時のことを想像して、そうやって考えている自分の見え方まで気にしていました。少し前までの自分は「オレにはオレの良さがあるから、あとのことは頼む」という感じだったのに、余計なことばかり考えて自分の良さまで消してしまった」
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