「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

鈴木椋大や北谷史孝の頑張りにスポットライトを当てたい [ナビスコ7節山形戦レビュー] 藤井雅彦 -1,712文字-

 

完全なる消化試合でノープレッシャーとはいえ、多くの選手がのびのびと良さを出せたいい試合だった。決めるべき選手が先制ゴールを決め、活躍が期待されながらも伸び悩んでいた若者が貴重な追加点をもたらし、この試合でマリノスデビューを飾った選手たちが粘り強くゴールを守る。細かな内容はさておき、勝ち方としても理想的だった。

相手のレベルはお世辞にも高いとは言えなかったが、少なくとも相手は予選リーグ突破を目指して本気の姿勢を貫いた。試合途中からリーグ戦に出場している主力選手が登場したことがそれを証左である。終盤は相手の攻勢を防ぎ、無失点で試合を終えた。ダメ押しの3点目を奪うチャンスを生かせなかったのは残念だが、カウンターが下手なのは主力組同様のようだ。それでも2-0の完勝である。

4-4-2_2015B このような試合は、すでにある程度の経験を持っている選手よりも、まったく経験のなかった選手に大きな意味をもたらす。CBに入りキャプテンマークを巻いた富澤清太郎は全体をオーガナイズしながら若手を上手に切り盛りしてくれたが、彼クラスの選手ならば驚きではない。ラフィーニャのゴールもそうだし、あるいは佐藤優平あたりもできて当たり前のプレーだった。

それならば、やはり鈴木椋大や北谷史孝の頑張りにスポットライトを当てたい。特に鈴木はこの試合で今後の人生を少なからず変えた。まずは大きなミスなく試合を終えたこと。雨が降ってスリッピーで難しいピッチだったにもかかわらず、バックパスを慌てることなく対処した。簡単なように見えて意外に難しい。たった一つのミスが失点や敗戦につながる恐ろしいポジションとプレーだけに、とても価値のある“無難”と言えよう。

とはいえ鈴木はまだ1試合しか出場していない。まだまだ経験の浅い選手で、この試合だけで現在リーグ戦で主力を務めている飯倉大樹、あるいは控えの榎本哲也よりも上に行けるわけではない。彼らはGKにとって最も重要な経験を、成功と失敗を繰り返しながら積み上げている。残念ながらたった90分間出場しただけの鈴木はまだまだ及ばない。

それでも、この1試合が彼の印象と評価を大きく変えた。仮に飯倉や榎本が負傷したとき、鈴木はリーグ戦でベンチ入りするだろう。あるいは想像したくないが、両選手がアクシデントに見舞われたときはピッチに立つ。その際に、彼のパフォーマンスの参考資料となるのは昨日のモンテディオ山形戦でしかない。90分間ミスなくプレーし、チームは2-0の完封勝利を収めた。その印象がすべてである。練習でのミスや、これまでの負傷続きの日々など、もう関係ない。彼の評価は昨日の試合でアップデートされている。

 

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山形3-4-2-1 完勝の山形戦をもって今季のナビスコカップは終了した。6試合中5試合を若手に経験を積ませる場、あるいは主力組を休ませる機会として活用。リーグ戦である程度の順位につけ、最後の試合で遅まきながら若手が輝いてくれた。これはこれでよかったのだと思う。ただし、今後は控え組に出場機会を与える余裕がない。1stステージは残り3試合で、2週間のブレイクを挟んですぐに2ndステージが開幕する。山形戦での頑張りは認めても、この中から主力組に大量昇格するとは思えない。

今後はこれまで一度もない練習試合を組むことを真剣に検討すべきだ。大学生やJFLといった明らかに力の劣る相手で、緊張感のない練習試合ではどうしても質が下がるがちだが、それでもないよりはマシだ。これについてはエリク・モンバエルツ監督というよりも、チーム統括本部がどういった方針を打ち出すか。鈴木や北谷の試合出場が数ヵ月後の天皇杯や、あるいは来年のナビスコカップではもったいない。

 

 

 

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