「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

スタメン表を見た瞬間、「してやられた」と思った [1st11節新潟戦レビュー] 藤井雅彦 -1,095文字-

スタメン表を見た瞬間、「してやられた」と思った。アルビレックス新潟のメンバーを見ると、配置は明らかに[4-4-2]だった。最近はマリノスと同じように相手の3バックに対応するため新潟も3バックを採用していたが、マリノスの裏をかくように本来の4バックに戻してきた。柳下正明監督の頭脳作戦だった。

新潟4-4-2 それに対して、マリノスはまったくの無策だった。サイドで数的不利になるのは試合開始前からわかっていたことなのに、一切対応できず裸一貫で臨んだ。前節の名古屋グランパス戦で強さを発揮したはずの右サイドは、相手が枚数をかけてきたことで逆に脆さをのぞかせた。「ミスマッチだった」と小林祐三。小林や富澤清太郎のパフォーマンスの問題というよりも、システム構造上の逆転を突かれた。

後半からマリノスも本来の[4-2-3-1]に戻して事なきを得たものの、前半に失点していたら勝ち点3はありえなかった。マリノスの選手、あるいはサポーターでさえも、メンバー表を見た瞬間に相手が4バックに戻したことは想像できた。しかし日本とJリーグが初体験の指揮官には、それがわからない。「メンバー表が出てからも特に指示はなかった」(中澤佑二)。システム変更は奏功したが、そもそもの選択が間違っていただけで、相手を見てシステムを決めているにもかかわらず何も準備していなかった。

 

 

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連戦の中で準備時間がなかったことは容易に想像できる。しかし、だからこそギャンブルは避けなければいけなかった。ギャンブルを打って、それが裏目に出た途端、何も手を打てないのであれば、最初から動かないほうがマシだ。3バックと4バックを併用して2連勝したが、どちらのシステムも完成度は低く、そもそもシステムを変更している狙いが不明瞭なことが問題だ。

一方でゴ3-4-3_2015ールデンウィークの連戦の最後を2連勝で終えられたのはまずまずの結果だった。優勝争いに絡むのは難しいかもしれないが、年間順位を見据えたところに復帰できる可能性は生まれた。2連勝では足りないが、次節の清水エスパルス戦で勝利を収めて3連勝にできれば、優勝争いグループのお尻が見えてくる。内容のともなっていない2連勝で勝ち点6を奪取できた価値は小さくない。

次節がとても重要な試合になるが、その清水も最近は3バックを採用しているから恐ろしい。その試合でマリノスは3バックを継続するのか、あるいは4バックに戻すのか。相手の出方次第とはいえ対応策を練っておく必要はある。教訓を得ながら勝つのは素晴らしい。しかし、チームとしてどこに進んでいるのかは非常に見えにくい。そのことに一抹の不安がよぎる。

 

 

 

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