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【無料記事】ONODERA GROUPはマルチクラブオーナーシップで何をやろうとしているのか?【いちばん分かりやすい解説・前編】

 

旧聞となってしまった話題で恐縮ですが、去る9月19日、横浜市内にて[日欧マルチクラブオーナーシッププロジェクトに関するメディアブリーフィング]が行われました。

横浜FCサポーターの皆さんもご存じの通り、横浜FCの親会社である株式会社ONODERA GROUPは昨年11月、ポルトガル2部リーグに属するUDオリヴェイレンセの経営権を取得しました。これによってONODERA GROUPは、複数の異なる国のクラブを経営する『マルチクラブオーナーシップ』を実現しました。日本初の試みとなります。

日本企業が海外クラブを経営するというと、DMMの傘下となったベルギー1部リーグのシント=トロイデンが思い浮かぶでしょう。FC東京で強化部長、ゼネラルマネージャー(GM)を務めていた立石敬之氏が、DMMを巻き込んで2017年に実現させたもので、その後、遠藤航(リヴァプール)や鎌田大地(ラツィオ)、冨安健洋(アーセナル)らがこのクラブをステップにして5大リーグに駆け上がっていき、現在は7名の日本人選手がプレーしています。なお、DMMはアビスパ福岡にスポンサードして経営にも参入していますが、親会社はアマパンショップホールディングスのため、これはマルチクラブオーナーシップには当たりません。

まあとにかく、おそらく横浜FCサポーターの皆さんも、ポルトガルにクラブを持ってシント=トロイデンみたいなことをやろうとしてるのかな?という漠然としたイメージしか持っていないのではないでしょうか。カズさんこと三浦知良が今年2月から期限付き移籍し(夏に期間を延長)、8月にユース所属の高校3年生・永田滉太朗がプロ契約をして期限付き移籍したという動きはありますが、ONODERA GROUPがこのマルチクラブオーナーシップで何をやろうとしているのか、一般報道はもちろん横浜FCサポーターにも伝わっているとは言い難い状況です。

そのために行われたのが今回のメディアブリーフィングで、山形伸之UDオリヴェイレンセ代表兼横浜FC代表取締役CEO、松本雄一新規事業開発室部長が約2時間にわたって説明を行いました。ちょうどトップチームの練習公開と日時が重なっていたため、ハマプレでは練習取材を優先しましたが、忍者を派遣していましたので、その内容をもとに、ONODERA GROUPがこのマルチクラブオーナーシップで何をやろうとしているのか、そしてそれが横浜FCにどう影響していくのかを紐解いてみたいと思います。

(文/芥川和久、写真&資料提供/横浜FC)

 

▼斉藤光毅が残したもの

最初にお詫びしておきますが、ハマプレ自身がこのメディアブリーフィング、質疑応答に参加していないため、いくつかの疑問が明らかになっていない状態です。その最たるものが、「そもそもなぜONODERA GROUPがマルチクラブオーナーシップに踏み切ったのか?」です。

そうした背景の説明はなかったのですが、ヒントになりそうなのは、横浜FCユース出身で2020年シーズン終了後にベルギーのロンメルSKに移籍した斉藤光毅の存在です。彼が残していった移籍金は2.2億円。これは2020年のクラブの収益の約11%に相当します。19年の移籍金収入はゼロでしたから、このインパクトは相当に大きかったと思われます。

また、斉藤光毅の残した移籍金で、ユースの練習場の人工芝グラウンドは、かなりヘタってきていた人工芝を新しく張り直し、KOKI SAITOフィールドという名前がつけられました。自前のアカデミーで選手を育て、その選手を移籍させたお金で施設を改修したという実績ができたわけです。

▲練習場のアカデミーが使う人工芝グラウンドは、斉藤光毅の残した移籍金で一面張り替えが行われ、KOKI SAITOフィールドと名付けられた

 

横浜FCだけでなく、プロサッカークラブの収益の大きな柱は『広告料収入』『入場料収入』『物販収入』の3つです。そして横浜FCの場合、端的に言えばサポーターが少ない。またホームスタジアムであるニッパツ三ツ沢球技場のキャパも少ない。そのため入場料収入と物販収入はどうしても多くは見込めません。そこで、移籍金や連帯貢献金での収入を第四の収益の柱として持てるようになれば、クラブの強化と安定経営につながります。

▲クラブによるイメージ図

 

ただ、収益の柱とするためには「再現性、継続性のあるビジネス」でなくてはなりません。斉藤光毅のような選手が10年か20年に1回運良く出てきてくれるのを待つのではなく、クラブが自前で育てた選手を早い時期から海外に送り込み、彼らが成長してチャンスをつかみ、ステップアップして移籍金を残す。そうした再現性、継続性のある体制であることが、このマルチクラブオーナーシップの大きな特徴です。

 

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