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長谷川竜也、奮闘……J2開幕節・大宮戦マッチレビュー

 

先制の場面も、決勝PKの場面も、その状況を生み出したのはキャプテンマークを巻いた小柄な背番号16だった。エルゴラッソのマッチレポートでは1ゴール1アシストの齋藤功佑をマンオブザマッチに選んだが、数字に残らなかった長谷川竜也の貢献はそれ以上のものがあった。王者・川崎から覚悟の移籍をしてきたばかりでキャプテンに指名された男は、彼が選ばれた理由をこれ以上ない形で証明してみせた。

 

▼オールコートのマンツーマン・プレス。攻撃は『ミシャ式』

先発11人の平均年齢は24.0歳。昨季までそれが30歳を超えることも珍しくなかったチームだが、もうすぐ28歳の長谷川が最年長で、ほかは23〜25歳と中村拓海だけが20歳。その若々しさが新生ハマブルーを鮮烈に印象づける。

それだけに試合の入りが心配された。立ち上がり、大宮はロングボールを使って攻め込み、拓海の周辺で起点を作る。クロスに精度を欠いて決定機こそ作られなかったが、若いチームがここでラッキーパンチを浴びていたらと思うと恐ろしい。しかし岩武克弥を中心にそこを耐えると、四方田修平監督が札幌でミハイロ・ペトロヴィッチ監督と作り上げたオールコート・マンツーマン・プレスが徐々に効力を発揮。高い位置でボールを奪ってショートカウンターを浴びせ、低い位置でボールを奪うことになっても、中塩大貴や拓海、手塚康平からサイドチェンジ含めて好フィードで相手を押し込んでいく。個人の守備能力は決して高くないかもしれないが、それをやるために彼らがそこにいるのだ。

攻撃時のフォーメーションは[4-1-5]。いわゆる「ミシャ式」だ。ウイングバックは前線に張り出し、3バックの右と左はサイドバックとして攻撃参加。サイドに広く幅を取って相手を広げ、フリックなどを入れ3人目が連動して相手を崩していく。6分、拓海から対角のロングボールが高木にわたる。サポートした中塩のクロスにフェリペ・ヴィゼウがモヒカン頭を当てるが、枠を外した。後ろにもっと良い体勢で小川航基がいただけに、思わずため息が漏れた。

しかし20分、齋藤のボールロストからピンチを招く。さらにその直後、右サイドを崩され小野雅史のクロスに河田篤秀が飛び込んできた。必死に絞ってきた中塩のクリアでCKに逃れたが、危ない場面だった。一方、28分にはお返しの決定機。イサカ・ゼインのクロスにまたもヴィゼウがモヒカンを合わせるが、わずかにポストの左をかすめた。

35分、大宮の矢島慎也のとりあえず打っとけ的なミドルシュートが大外に外れたあと、拓海とゼインが何か意見をぶつけあっている。身振りや表情から、あまり良くない状況を何とかしようという会話に見えたが、確かにこの試合を通じて右サイドの守備は不安定さが否めなかった。

 

▼チームの狙い、キャンプからの取り組みが実った2得点

流れをつかみきれずに時間が過ぎていった前半、ついにそれを結実させたのはキャプテンのアグレッシブな姿勢だった。40分、大宮の西村慧祐がボールを持ったところへ、長谷川が長い距離のプレスをかけて奪い取る。サポートした高木からボールを受けたのは、「サイドからクロスを上げる形が多かったけど、自分のところにスペースがあると感じていた」という齋藤。トラップでボールを浮かせ、「右足より得意」という左足を思い切り振り抜くと、抑えの効いた見事なシュートが飛びつく南雄太の手の先を抜いてゴールネットに突き刺さった。

先制点が“アグレッシブなプレスからのショートカウンター”というチームの狙いの形なら、追加点もまた「連動して3人目の関係性」(齋藤)という、キャンプから取り組んできたチームの攻撃の形だった。後半開始早々の46分、長谷川が左サイドの深い位置でキープ。サポートした中塩が中央の手塚に渡すと、手塚がダイレクトで、彼にしかできない優しいタッチで最終ラインの裏にボールを送る。3人目で連動し、走り出していたのは齋藤。ペナルティーエリア内左、完全にフリーで抜け出して折り返すと、走り込んできた小川がゴールに流し込んだ。

 

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