「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

新システムを試す価値 -2トップの意味- : 藤井雅彦エクスプレスレポート

 

 

1月25日の始動日から数えること21日目。2月14日のバレンタインデーで始動からちょうど3週間が経過したことになる。今日から16日後が3月2日のJリーグ開幕日(対湘南ベルマーレ)である。開幕までの準備期間は折り返し地点を過ぎた。「あっという間の10日間だった」と宮崎キャンプの充実ぶりを語ったのは樋口靖洋監督である。予定していたトレーニングメニューをすべて消化できたことがその言葉の根拠だ。

しかしながらチーム作りにおける素材集めや課題抽出の作業が完了したわけではない。キャンプ終盤、藤田祥史が腰痛で離脱したことでマルキーニョスとの2トップを試せなかった。また「(齋藤)学のトップ下もアリかな」と示唆していることから、システムは別にして齋藤をセンターラインで起用する可能性も模索しなければならない。

そこで今週の練習試合である。明日15日にザスパクサツ群馬と、明後日16日には明治大と練習試合を行う。この2試合のテーマについて樋口監督は「キャンプでできなかったことを試す」と話した。前述した選手起用のバリエーションを試し、機能性や周囲とのコンビネーションを深める機会として考えているようだ。

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その予行演習として、14日の練習ではコートが狭いながらも11対11のゲーム形式のトレーニングが行われた。ただし、ここでも誤算が生じた。齋藤が左足首痛のため室内調整を余儀なくされたのである。キャンプ中から痛みを抱えており、開幕を前に無理をさせない方針だという。リスクを最小限に抑えるため群馬戦と明治大戦に出場しないケースも十分に考えられる。トップ下・齋藤は彼個人の新境地開拓とチームの機能性、両方の観点から意味のチャレンジだったと思うだけに、このタイミングで試せないのは非常に残念だ。

誤算の齋藤に対して、腰痛の藤田は順調な回復を見せている。練習では彼らしい豪快な左足シュートを披露するなど、徐々にコンディションを上げている。「左足のシュートとワンタッチゴール」と彼自身が語っていた特徴に偽りはなく、キャンプ中も自分の“型”を出せれば威力を発揮していた。逆算して言えば『自分の左側のいい位置にボールを置く』ことが能力を引き出すポイントである。

しかし結論から言えば、おそらく藤田に1トップは不似合いのポジションだ。相手DFを背負ってボールを受ける、体を投げ出してハイボールやルーズボールを競り合う、そしてスペースへ流れて半身で相手DFを抑えながらボールキープする。これらの動作で良さを発揮する選手ではない。すべてを万能的にこなせるのが例えばマルキーニョスであり、彼が日本サッカーで輝かしい実績を残してきた所以でもある。藤田は多岐に渡る役割をこなせるほど器用な選手ではない。

そんなレフティーストライカーの長所を引き出すために、2トップは絶好の配置転換になるかもしれない。特に万能型のマルキーニョスを相棒にすれば、藤田は持っている力をより発揮する環境が整う。ゴール前の迫力も増すため、相手の驚異となるだろう。スタートからではなくても、状況や展開によってバリエーションとなる布陣になるのは間違いない。

齋藤の離脱、そして藤田の復帰。こういった状況を踏まえて、練習では2トップの下に中村俊輔を配し、さらにトリプルボランチを形成する新たな試みが

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