「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

パーフェクト。この日のマリノスは掛け値なしに強かった [2nd9節浦和戦レビュー] 藤井雅彦 -1,652文字-

中村俊輔が決めた直接FKについて、あらためて多くを語る必要はないだろう。中村自身がファウルを受けた時点でゴールへの期待が高まり、それを見事にやってのけた。もちろん誰でもできる芸当ではなく、彼にしか蹴ることのできないボールの軌道で、ゴールネットを鋭く揺らした。「あのFKがこの試合のすべて」。GK飯倉大樹の言葉どおりで、その後の試合展開に大きな影響を与えた。

4-3-2-1_2015 終わってみれば4-0というスコアだ。完勝であり、快勝でもある。ただし、2-0で折り返した後半立ち上がりは非常に危険な時間帯だった。前がかりになる相手に対して、チーム全体がラインを下げてしまった。伊藤翔と中村の運動量が落ちたことで相手のパスコースを制限できず、アタッキングエリアまでいとも簡単に侵入された。浦和レッズにパワフルなストライカーが一人いたらと思うとゾッとする。

逆に言えば、その時間帯にゴール前で耐久力を発揮できるあたりがマリノスの強さの一端だろう。中澤佑二とファビオを中心にゴール前の守りに注力し、なんとかはね返す。サイドを突破されてもゴール前だけは譲らない。その我慢が実ったのが59分の齋藤学のゴールである。齋藤を起点としたカウンターは中村を経由し、右サイドを走るアデミウソンへ。アデミウソンはマイナスクロスを齋藤に合わせ、背番号11がこの日2点目を見事決めた。

 

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3-0になった時点で大勢は決した。さらに64分には左CKからファビオがダメ押しゴールを決め、体調不良で試合に臨んでいた中村は68分でお役御免となった。その後は後半立ち上がり同様に押し込まれる時間帯も長かったが、この点差ならば仕方ない面もある。相手は捨て身で前へ出てくるためで、それに対してマリノスもある程度は人数を割いて守る必要がある。「あの点差なら、このゲームコントロールも悪くないと思う」。中町の言葉はおそらく正しい。

 

 

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ちなみに、交代枠を一つ残して試合を終えたことに首を傾げるサポーターがいたかもしれない。中村に代わってピッチに入ったのは喜田拓也で、彼はトップ下としてエネルギッシュな役割を期待されていた。2枚目の交代カードは栗原勇蔵で、前節のサガン鳥栖戦同様に守備固めとして投入され、再び3バックの中央に入った。しかし、3枚目の交代カードは最後まで切られることはなかった。それについてエリク・モンバエルツ監督は毅然とした態度でこう説明した。

「チームが良い状態だったので、そのリズムを崩したくなかった。ほんの少しのことで試合の流れはガラッと変わる。交代カードは必ずしも使わなければいけないわけではない。それに試合の中でGKの飯倉が痛みを訴える場面があった。万が一、飯倉がプレーを続けられないときのためのGKの交代枠を残しておいた」

浦和3-4-2-1 なるほど、納得である。むしろ交代枠を残したことよりも、それ以前の交代の人選のほうが腑に落ちない部分がある。脳震とうの影響でコンディション万全ではない喜田を4-0の展開で起用しなくてもよかったのではないか。藤本淳吾や天野純、あるいは端戸仁にチャンスを与える一手もあっただろう。同様に4-0の状況で守備固めが必要だったのか。無失点で終わることは重要だが、そのための交代策として栗原を3バックに入れる効果はなかなか見えにくい。わずか1点差で、しかも豊田陽平のようなストライカーがいる鳥栖とは違う。

最後は重箱の隅をつつくようなことになってしまった。それほどまでにパーフェクトな内容と結果で、マリノスは浦和に勝利した。この日のマリノスは掛け値なしに強かった。

 

 

 

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