(雪国で)根性が鍛えられました。自分は特に負けず嫌いだと思いますが、それは雪の影響で普通のサッカーができなくても、ほかの地方のチームに負けたくなかったからという部分が大きい [加藤蓮インタビュー(後編)]
【加藤蓮選手インタビュー(後編)】
実施日:3月25日(月)
インタビュー・文:藤井 雅彦
→前編より続く
インタビュー後編では加藤蓮を形成するルーツやパーソナリティに迫っていく。
「適応能力が武器」と胸を張る器用なサイドバックは、どのように誕生したのか。
ベースにあるのは北の大地で育んだ強靭な足腰、そしてメンタルだった。
「ものすごく負けず嫌いです」
若き日に味わった悔しさが反骨心となり、その後の成長につながっていった。
過酷な連戦で存在感が光る24歳は、こだわりのポジションで高みを目指していく。
チームメイトの前では平静を装って、家に帰ってから泣いていました。泣いている姿や悔しさを見せたくなかったんです。
――北海道出身の加藤蓮選手ですが、サッカーを始めた頃はやはり雪の上でボールを蹴っていたのですか?
「小学校1年生でサッカーを始めて、6~7歳の頃から雪中サッカーで育ちました。冬になれば雪に足が埋もれてしまうので、普通のサッカーはできません。だいたい膝の上くらいまで雪が積もっているので、埋まりながらもがくような感じです(笑)。ほとんど蹴れる状況ではないので、トレーニングの一環でラグビーをやったりもしました。ボールを3個くらい使って手でパスを回して、とにかく雪を踏み潰していく。ラグビートレーニングは中学生になってからもやっていました」
――不自由な場面があったかもしれませんが、一方で鍛えられる環境だったという考え方も?
「雪国ならではのトレーニング方法がたくさんありました。そういった環境で育ってきたからこそ学べるものもありましたし、心身ともに強さを身につけられたのかな、と。
まず筋力が相当鍛えられたと思います。足を高く上げないと雪に埋まってしまうので、とにかく太腿を上げる。それで太腿が太くなったと思いますし、プロの世界でも太いほうかもしれません。中学生の頃までは筋トレをまったくやっていなかったけれど、自然の中で筋力がつきました。スプリント能力もその頃に培ったものがベースにあると思います。
それとフィジカルだけではなくメンタル面の、特に根性が鍛えられました。自分は特に負けず嫌いだと思いますが、それは雪の影響で普通のサッカーができなくても、ほかの地方のチームに負けたくなかったからという部分が大きいかもしれません。それを言い訳にはしたくありませんでした」
――自分を負けず嫌いだと思いますか?
「プロサッカー選手は負けず嫌いがほとんどだと思いますが、その中でも自分はものすごく負けず嫌いだと思っています。
札幌の育成組織に所属していた頃からその気持ちをずっと持ち続けています。チームから何人かJリーグ選抜に選ばれる場面で自分がメンバーに選ばれなかった時や、海外遠征のメンバーに入れなかった時などは、すごく悔しかったです。悔しくて悔しくて泣いた覚えがあります。でも、それは周りの仲間には絶対に見せませんでした。チームメイトの前では平静を装って、家に帰ってから泣いていました。泣いている姿や悔しさを見せたくなかったんです。負けを認めるみたいで悔しいじゃないですか(笑)」
――負けず嫌いは年齢、立場に関わらず現在もですか?
「もちろん今も負けず嫌いです。ただ、周囲から学ぶ姿勢はとても大切にしていて、特にF・マリノスは同じポジションに素晴らしい選手ばかりいるので毎日が学びと吸収です。
今日の練習では小池龍太さんのプレーをずっと見ていました。やっぱり上手い。ボール1個分動くたびにポジションを修正しています。基本となる“止める・蹴る”も当然上手い。怪我をして長い時間試合から離れていても、あれだけの精度の高さでプレーできるのは本当にすごい。判断にもミスがありません。そういった選手とポジションを争えるのは自分の成長につながりますし、とても嬉しいこと。
でもライバルでもありますし、負けたくないという気持ちは常に持っています。それを忘れたり、失うことはありません。そういった選手から学んでもっともっと成長するために移籍加入を決断しました」
僕は右利きだけど左利きの選手と同じようにプレーしたい。右利きの左サイドバックではなく、左利きっぽい左サイドバックが理想。
―-連戦の中で、最近は一列前のウイングで起用される場面もあります。求められる役割も異なる中で、どのような意識でプレーしていますか?
「各ポジションに求められる仕事や役割はミーティングの時から映像を見ているので頭に入っています。どのポジションにもそれぞれの役割があって、何をしなければいけないのかは分かっています。それをしっかりとやった上で自分の色を出していきたい。F・マリノスのウイングはゴールに直結する役割が求められているので、起用された時にはもっと迫力を持ってやらないといけない。ただ、選手としてどこで勝負したいのかと考えたら、それは絶対にサイドバックです」
(残り 1858文字/全文: 4059文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
タグマ!アカウントでログイン
tags: 加藤蓮
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ