「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

早いうちに、しっかりと柴崎岳の芽を摘み取っておく [J24節戦プレビュー] 藤井雅彦 -1,761文字-

 

明日の試合における世間的な見どころは、日本代表に選出された柴崎岳のプレーであろう。鹿島アントラーズの中盤の底に陣取る新進気鋭のボランチである。ピッチでの存在感や勝利にかける執念は隣にいる小笠原満男にまだまだ及ばない。過去のマリノス戦では、今年の前半戦の対戦以外で目立った活躍はなく、むしろ消えている時間のほうが長い。将来性を高く評価されているようだが、見た限りのパフォーマンスでは正直言って疑問符である。

鹿島4-2-3-1 とはいえ先日の日本代表戦ではA代表デビュー戦ながら、しっかりと爪痕を残すゴールを決めた。こういった直後は、本当に注意する必要がある。一つの試合、一つのゴール、あるいは一つの出来事をきっかけに飛躍的に成長するのが若手である。覚醒した可能性のある直後に対戦するのは、非常に嫌なタイミングと言えよう。

早いうちに、しっかりと芽を摘み取っておく必要がある。試合2日前の紅白戦では、主力組のボランチに富澤清太郎と三門雄大が入った。ここのところ存在価値を高めていた小椋祥平だが、名古屋グランパス戦の2失点目に絡んだこともあり、今回はベンチスタートか。起用法の是非はともかく、三門には激しいプレーを期待したい。彼が小笠原と柴崎をどれだけ監視できるかが、試合のポイントだろう。

 

 

下バナー

 

4-3-2-1_三門 その上で、いかにして点を取るか。鹿島戦の1トップには伊藤翔が入る見込みで、ここの人選については相手守備陣の性質を重視しているようだ。屈強CBがいる鹿島には矢島卓郎をぶつけ、サイドに流れて起点を作れそうな鹿島に対しては伊藤を起用する。その逆も効果的に働きそうではあるが、実直で真面目な樋口靖洋監督は素直に対抗していく。伊藤が鹿島守備陣を慌てさせれば、齋藤学や中村俊輔にチャンスが巡ってくる。

あるいはスーパーサブとしてベンチに控えるラフィーニャがゴールを決めるか。右足首ねん挫で離脱していたが、前述した紅白戦には参加できた。樋口監督曰く「あとはゲーム体力だけ」と話しており、どうにか試合出場できる体勢が整った。90分間の出場は無理でも、後半に1点ほしい場面では大きな戦力になる。やや後ろ向きかもしれないが、後半途中までタイスコアで進められれば勝利の可能性は高まる。

チームとしてモチベーションを高めるのは難しい状況にある。それでも「試合をこなすだけになってはいけない」(樋口監督)。チームではなく個人でもいい。もしくは対戦相手への対抗意識もアリだ。なんとなく浮ついたメンタルで試合に入ってしまっては、優勝戦線生き残りの可能性をおおいに残している鹿島には勝てない。

 

【この試合のキーマン】

MF 26 三門 雄大

 今シーズンからマリノスに移籍加入したが、ここまでに持っている力すべてを発揮しているとは言い難い。ボランチはポジション争いの最も激しいエリアだけに苦労が想像できたこととはいえ、確固たる地位を築いていたチームを自ら離れる決意をしたのだから、たまっているものがあるはず。

 鹿島戦で期待される働きは、チーム全体にアグレッシブさをもたらすこと。具体的には、前方向へのプレーを増やしたい。本人も「バックパスではなく、前方向へのパスを増やしたい」と話す。たとえば斜め後ろではなく、斜め前へのパスが全体を押し上げることにつながる。

 そしてパスを出したあとは、再び受け手となるべくランニングしたい。決定的な仕事はできずとも、流れを呼び込むことはできる。そこからの強烈なミドル砲は枠さえ捉えればチャンスになる。「オレの後ろにレインボーのオーラが見えるでしょ?」。そう言ってニヤリと笑ったアグレッシブMFが鹿島討伐のきっかけを作る。

 

 

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ