「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

4-4-2を継続、俊輔はベンチスタートか [J13節鳥栖戦プレビュー] (藤井雅彦) -1,820文字-

 

暫定とはいえ首位の席に座っているチームに胸を借りるゲームだ。2011年のJ1昇格から3年の月日が経ち、サガン鳥栖はいつの間にか素晴らしいチームに仕上がっている。これほどまでにスタイルと人選がピタリとハマっているチームは、日本全国を探してもなかなかないだろう。

鳥栖4-2-3-1その象徴が豊田陽平という日本人屈指のストライカーである。毎年のように得点王を争い、今シーズンもすでに7ゴールを挙げて得点ランキング2位タイにつけている。この勢いならばW杯メンバーに滑り込み当選を果たすかもしれない。決定力とともに光るのが空中戦での存在感だ。空中戦の強さといってもさまざまで、彼の場合はCBに競り勝たせない技術が抜群に高い。自身が先にボールに触れる回数も多いが、それができないときも相手に競り勝たせない。つまり引き分けに持ち込み、ボールを後方に流す。そこに味方が走りこむ共通理解もできている。

豊田との肉弾戦に挑む栗原勇蔵は鳥栖の印象を以下のように語っている。

「鳥栖は豊田だけでなく一発を持っている選手が多くて、ロングスローもある。理に適っている」

基本的には自陣から縦方向へのロングボールが多いチームだ。ターゲットはもちろん豊田で、前述したように競り合いに強さを発揮し、はね返されなければ相手ゴールに近づける。こうして守備側の選手が後ろ向きに走る状況を作れれば鳥栖の術中だ。鳥栖が前向きにボールを追いかけると、守備者はタッチラインに逃げる回数が増える。そこで登場するのが藤田直之である。CK同様に鋭いボールをゴール前に放り込み、それだけで大チャンス到来だ。

ロングスロー対策について樋口靖洋監督は「簡単にスローインを与えてはいけない。スローインにするにしても、ペナルティエリアの高さで出すのはなるべく避けたい」と語る。ロングボール攻勢をすべて封じることはできないが、競り合いをすべて勝つことはできる。両CBとボランチの働きが鍵になるだろう。鳥栖の必勝パターンを回避しつつ、勝機を見つけたい。

対してマリノスは前節のガンバ大阪戦同様に[4-4-2]を継続する模様だ。先週と同じように樋口監督は「攻撃に推進力を出したい。そのためには前でボールが収まるかどうか」と狙いを明かす。藤田祥史と伊藤翔は距離感を保ちながら周囲を押し上げる働きを期待したい。

 

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4-4-2_藤田_伊藤_中村不在中盤と最終ラインに関しては前節からメンバー変更がありそうだ。最大のポイントはガンバ戦の後半早々にベンチへ下がった中村俊輔の起用法だが、この試合では今季初めてベンチスタートになる公算が高い。最近はコンディションが悪いのか表情も冴えない。木曜日に行った紅白戦では2本目からの出場となり、樋口監督も「週の頭は体が重そうだった」と歯切れが悪い。いまの状態でサイドMFとしてハードワークを求めるのは厳しいという判断を下すことになりそうだ。

ほかにはボランチで小椋祥平ではなく富澤清太郎が起用されることになりそうだ。これは明らかに豊田の高さを警戒した対策で、昨年は相手のゴールキック時にCBではなく富澤が豊田をマークする形を取っていた。また、左SBは下平匠ではなくドゥトラになる。ACLが終わり連戦ではないのにターンオーバーする利点はあまりないように思うが…。

最後に、この試合は世間的には『W杯メンバー発表前最後のJリーグ』として認知されている。だから代表候補たちの活躍でマリノスが勝利することを切に願う。メンバー入りの可能性が高いと言われる齋藤だけでなく、最近は招集されていない栗原も予備登録を含めてチャンスがないわけではない。そして中澤佑二はいまでも本気でブラジル大会出場を目指している。

「逆転があるのがサッカーというスポーツでもある」

中澤の言葉を選手全員が胸に秘めて、開幕3連勝以来の連勝を飾ってほしい。

 

 

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