【サッカー人気1位】今季初のマルチゴールで勝利、両チームの策でフェーズが切り替…

「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

試合後、嘉悦朗社長は記者陣に囲まれて監督の進退について言及した [J10節浦和戦レビュー] (藤井雅彦) -1826文字-

 

泥沼状態とは、まさにいまの状態を指す。必死にもがいて脱しようとしても、泥がからみついて抜け出せない。そんな時間が続いている。

4-2-3-1_藤田奈良輪ドゥトラ 浦和レッズ戦ではスタメン表に驚きがあった。累積による出場停止の富澤清太郎に代わってボランチに新しい顔が加わるのは当然だが、ほかのポジションは違った。「幸いにしてフィールドプレーヤーにけが人はいない」(樋口靖洋監督)状況なのだから、指揮官があくまで意図的にスタメンを入れ替えた。

とりわけFC東京戦で出来が悪いと判断され、前半だけで懲罰的に交代を命じられた中町公祐と小林祐三の処遇は驚きだった。この試合はベンチスタートとなったが、いずれも現体制では不動のレギュラーである。人一倍プライドが高い両者だけに、勝敗に関係なく今後にも影響を与える采配だ。

一方で、今季リーグ戦初先発を飾ったのが左SBドゥトラと右SB奈良輪雄太、そしてボランチの三門雄太だった。ドゥトラはACLで先発起用されており、最近はミッドウィーク担当として下平匠と交互に使われていた。奈良輪は主に左右SBのバックアッパー的な位置付けで、三門に関しては今季新たに加わったが層の厚いポジションでなかなか出番に恵まれなかった。

最大の驚きであり失策は、日本代表アタッカーをベンチに座らせたことである。その狙いについて指揮官は記者会見の席でこう語った。

「疲労が非常に濃かった。前節もそうだったし、90分通していいパフォーマンスができるとは思えず、むしろ彼をジョーカーとして持つことでチームのパワーを上げることが狙いだった」

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 何よりも勝利を欲しているチーム状態で、これといった得点源がないにもかかわらず、唯一の突破口であるアタッカーをベンチに置く。疲れがないとは言い切れない。しかし、それでも試合に出続けて結果を残す選手こそ日の丸に相応しい。かつて日本代表でもレギュラーだった中澤佑二は、疲労を理由にリーグ戦を休むことはなかった。クラブと代表を両立させてこその日本代表選手なのだ。もちろん齋藤学自身もそれを望んでいる。

浦和3-4-2-1 こうしたチグハグな采配が結果を左右してしまう。これがいまのマリノスの流れなのだろう。三門のパフォーマンスは悪くなかったと思うが、結果的には彼のマークミスが相手の決勝点となった。三門自身が反省すべき問題で、これを采配ミスと言うのは稚拙すぎる。ただ、入れ替わった選手のエラーで勝ち点を落としたという事実が、いまのチームには重くのしかかる。

試合後、嘉悦朗社長は記者陣に囲まれて監督の進退について言及した。

「一昨年も開幕から勝てなかったが、その後に15試合負けなしだった。一昨年できたことが今年できないわけがない。基盤はある。成功体験もある。どっしり構えなければいけない。あたふたしないこと。地力のあるチームなんだから、それを忘れてはいけない」

 つまり現時点で監督交代という選択肢は、ない。ゴールこそないがチーム状態はわずかながら上向いているという手応えがあるようで、それを信じて流れが変わるゴールと勝利を辛抱強く待つ方針だ。

一方で、補強については以下のように語っている。

「中断期間にやらざるをえない。必要な判断をしなければならない」

 わかりやすいのは得点力のある前線の選手を獲得する一手で、首脳陣も視野に入れていることがうかがえる。とはいえ中断期間までの残り3試合はいまのメンバーで戦わなければいけない。

7試合勝ちなしで順位は14位まで落ちた。首位の鹿島アントラーズまでの勝ち点差は『10』で、降格圏にいる16位・大宮アルディージャとは勝ち点3差だ。それだけを見ても置かれている状況の厳しさは分かるだろう。中3日で迎えるガンバ大阪戦までに劇的にチーム状況を変える手段などありえない。もうしばらく我慢の時間が続くかもしれない。

 

 

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