「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

マリノスは、この相手を攻略しなければならなかった [J25節C大阪戦レビュー] (藤井雅彦) -1,833文字-

出来の悪い試合ではなかった。むしろ内容は良かったのではないか。

試合後、樋口靖洋監督は胸を張って言った。

「90分間最後まで積極的な戦いができた。結果としては勝ち点1だったがウチが主導権を握って試合を進められたと思っている。引き分けだったが今後につながる勝ち点1だと前向きにとらえている」

4-2-3-1_2013_2st 決して強がりには聞こえなかった。逆に敵将・セレッソ大阪のレヴィー・クルピ監督が発した「決定的なチャンスがどちらにあったかといえばセレッソ大阪だった」という言葉には賛同しかねる。シュート数だけを比較したときでも20本対8本という数字は動かぬ証左であり、その内実を見てもマリノスが圧倒していたのは明らかだ。

序盤からセレッソは10人で自陣ゴール前に引きこもった。前線に柿谷曜一朗一人を残し、あとの選手は全員が引いてゴール前を固めた。最近、不覚をとった大宮アルディージャや柏レイソルのような組織的な守備ではなく、ただ下がるだけの主体性のない守備である。セットプレーからミス絡みで失点したのは誤算だが、その後にドゥトラのファインゴールですぐさま同点に追いついた。その後もチャンスの数が多かったのはホームチームである。

「セレッソの出来からすれば勝っておきたかった」。中澤佑二はそう唇を噛んだ。相手の出来は決して良くなかった。アウェイで戦った際のセレッソは勇敢な姿勢で勝ち点3を狙っていたが、この日は負けることを恐れるあまり臆病な戦いに終始した。だからマリノスは、その相手を攻略しなければならなかった。勝ち点1では物足りず、勝ち点3が必要なゲームだったのである。

引いて守る相手に、あの手この手を駆使して攻め込んだ。17分、兵藤慎剛の左CKをニアサイドの富澤清太郎がヘディングで狙うも、GKキム・ジンヒョンの好セーブに阻まれる。28分には中村俊輔のロングスルーパスからマルキーニョスが右足で狙うも、シュートは枠左へ。前半ロスタイム、齋藤学が相手陣内でインターセプトに成功し、そのままドリブルで持ち込んでシュートを放つ。後半に入った56分にはドゥトラの縦パスをきっかけに、バイタルエリアに侵入した兵藤がスルーし齋藤へ。コンビネーションから齋藤がシュートを放ったが、DFにブロックされた。

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現・日本代表FW柿谷というカウンターの名手がいながらも、マリノスは最終ラインを押し上げることでセカンドボールのほとんどを拾い上げた。それによって二次攻撃、三次攻撃が可能となり、終始セレッソを押し込んだ。セットプレーとオープンプレーの両方を駆使して、ゴールに迫った。それでもゴールを挙げられなかったのは、単純にセレッソの守備を褒めるべきという向きもあるだろう。

4-2-3-1C大阪 選手交代についてはさまざまな意見があるはず。今シーズン一度もリーグ戦に出場していないジョン・ドンホの起用には少なからず驚いたが、馬力がある彼を思い切って起用する策は決して悪くない。それよりも解せないのは足をつったわけではない富澤に交代して小椋祥平を起用したことでセットプレーの高さ、あるいはロングシュート、そして交代カードを一枚失った。結果、終盤にファビオを投入できなくなってしまった。ただし、この程度の落ち度が勝ち点の多さを左右したとは考えにくい。やはり今シーズンのマリノスは先発に立った11人でリードを奪わなければ勝つ可能性が著しく低下するチームなのだ。

勝ちたかったが、勝てなかった。幸いなことに2位から4位までのチームが総崩れしたため、勝ち点差はわずかながら開いた。上位陣が勝ち点を伸ばせないなかで、わずかに『1』ではあるが上積みできた。さらに言えば「結果的に連敗しなかったことも大きい」(中村)。シーズン終了に向けて始まったカウントダウンに際して、物事をポジティブにとらえるメンタルを求められているのかもしれない。

 

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