「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

『最終目標』に向けて – 樋口靖洋 ロングインタビュー 最終回  「ベンチから見ていても選手が躍動してくれている」-2,874文字-

【インタビュー原稿 第5回 】
監督 樋口 靖洋(横浜F・マリノス)

聞き手:藤井 雅彦 写真:星智徳

1
樋口靖洋監督独占インタビューの最終回は、リーグ戦再開に向けた展望をお届けする。Jリーグは今週末の6日からリーグ戦が再開され、マリノスはホームのニッパツ三ツ沢球技場で大分トリニータを迎え撃つ。その後は大宮アルディージャや浦和レッズといった上位クラブとの対戦も残されている。インタビュー途中、樋口監督はおもむろに立ち上がると、右手にペンを持ち、順位表が書かれたホワイトボードに文字を書き足していく。『最終目標』に向けて熱を帯びた指揮官の声に耳を傾けてほしい。
――樋口監督は就任以降、選手に『トライする主体性』を求めています。今シーズンの序盤戦では監督自身もたくさんトライしたように見えました。

「まず、僕の中で去年のベースに対する自信があります。2月の宮崎キャンプでそれを再確認できて、同時に次のステップに進めるという確信を得ました。キャンプ中のトレーニングマッチでは、最初2試合は去年試合に出ていたメンバーとそうではないメンバーをシャッフルして戦った。そのあと去年の主力メンバーとそれ以外のメンバーというように分けたとき、それぞれで浸透度の違いを感じました。ネガティブに言うと“差”があった。でもポジティブに捉えれば『これくらいできる』というベースがあると分かったんです。それが2トップや3ボランチといったいくつかのことにトライできた背景にありました」

――なるほど。そして、さまざまなトライ&エラーを繰り返した結果、フォーメーションでいうと落ち着くべき場所に落ち着いたわけですね?

「選手同士の距離感をつかみやすいのが[4-2-3-1]ということです。いまのメンバーで構成するなかで一番スムーズなシステムだと思います。でも、再三言っているように手が一つでは長いシーズンを乗り切れない。今後も戦い方のバリエーションを増やしていきたい」

2――結果が出なかった昨シーズン序盤とは対照的な状況になっています。

「去年の序盤戦も僕の中での手応えは決して悪くなかったんです。結果への手応えはなかったけど、やっていることへの手答えは6割から7割くらいはありました。だから『これでも結果が出ないのか』というジレンマを感じましたね。去年の苦しかった時期も含めて、選手たちはピッチで常に全力でプレーしてくれていると思います」

――結果が出ていることもあってか、序盤戦の選手たちはのびのびとプレーしているように感じました。

「ベンチから見ていても選手が躍動してくれている。『行くぞ』という主体性を感じます。これはすごく嬉しいこと。手応えというのは結果から感じる手応えと、ピッチの選手たちから感じる手応えの両方がありますから」

――ただ、ここまでは運や巡り合わせに恵まれていた部分も少なからずあると思います。その点については?

「例えば広島戦で相手の主力選手が出場停止だったりしたけど、それが巡り合わせなのか運が良いのかはちょっと分からない。これはシーズンを戦っていれば、どこかである。それを自分たちで引き寄せていると捉えています」

――今後は不利な条件で戦う場面もあるかもしれません。

「チームは生き物だからシーズンの中で絶対に波がある。だからこそ本当のチーム力を問われるし、どれだけ準備できているかを問われると思います」

――序盤戦を終えて3位という成績は上々なのでは? (ここからペンを持ってホワイトボードの前に立つ)

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