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【無料記事/J3第19節第2報】Review◆求められるクオリティと勝利へのこだわり。14位という順位をFC東京U-23はどう考えるのか(2016/08/01)

意識、判断、戦術といった領域で野澤英之と林容平は最善を尽くしたが、ガイナーレ鳥取に一歩及ばず、FC東京U-23は敗れた。彼らが分身して二倍に増えることができるのなら、あるいは勝つ可能性もあったのだろうか?

フィールドプレーヤーで唯一のオーバーエイジ(OA)である林がユ インスとともにインサイドハーフ、キャプテンの野澤がアンカーの位置でキックオフを迎えたが、相手の出方をうかがいながら攻撃的なサイド(サイドバックとウイング)を押し出し、ふたりは後方に重たく中心を相手に明け渡さないよう、攻め上がりを自重し、バランスを保っていた。野澤にいたっては最終ラインに入ってボールを捌くにとどめ、スイーパーとしてチーム全体を見る役割。ファーストハーフ45分間は、3バック(3-4-3)のような陣形に映る時間帯が多かった。

この日のOAは林と、ゴールキーパー榎本達也のふたりのみ。野澤を除くと、トップチームの若手選手は佐々木渉と平岡翼しかいない。柳貴博が離脱中、この日は小山拓哉も不在とあって、両サイドバックは右を平岡、左を佐々木が務めざるをえなかった。センターバックはJリーグ・JFA特別指定選手の大学生山田将之と、ほぼU-23専任になっている岡崎慎。3トップはセンターにやはり特別指定の大学生矢島輝一を配し、左右のウイングには鈴木郁也と松岡瑠夢。比較的年長で経験があり、高校生や大学生よりもサッカーというゲームを理解している選手を中盤に固め、指揮棒を振らせ、若い選手を「行って来い」と送り出す布陣になるのは必然だったのかもしれない。

後半はラインを押し上げてより攻撃的な姿勢を示したが、途中でセンターバックの山田将之が退いたためアンカーだった野澤がセンターバックに、林がアンカーにと、一列下がってさらに守備に集中する事態に陥り、ふたりの攻撃力を活かすことはできなかった。失点の場面では、センターバックにポジションを変えたあとの野澤が絡んでしまい、「あれはぼくのミスですし、試合中のアクシデントでポジションが替わるのはよくあることなので、あれにはしっかり対応しないといけなかったと反省しています」とコメントを残すことに――。

メンバーの枠を空けておいて下のカテゴリーの選手を入れ、経験を積ませるというマネジメントは、プロでも育成年代でもあることだが、FC東京U-23の場合はそれが極端だ。高校生に経験値を積ませるということでは役に立っているのかもしれないが、あまりに勝敗への意識が薄れると、育成の観点からもマイナスになりかねない。
安間貴義前U-23監督が「最初の10試合は合宿」と言っていたその10節までは、内容もいいとは言えず敗戦が多かったが、その後は相手を圧倒して勝てるようになった。しかしFC琉球にアウエーで勝ったあと、ホームで大分トリニータとガイナーレ鳥取に連敗。14位に低迷したまま、抜け出せないでいる。
この日も鳥取を相手に押し込み、攻める、優勢の時間帯が多かった。もうここからあとは勝利という結果を強く意識して取り組まないと、歩みが遅くなる。
ここぞといういちばん大事な場面で、年長者らしい落ち着きとブラジル人選手らしいクオリティを発揮して決勝点をマークした鳥取のフェルナンジーニョと、17本のシュートを撃ちながら無得点に終わったFC東京U-23との差。この差を覆すべくトレーニングに励む必要がある。
中村忠U-23監督は「トレーニングでできないことは試合でもできない」と言い、問題の解決は練習にしかないと明確に語った。FC東京U-15むさしとFC東京U-18で指導してきた中村監督だからこそ、U-23に集う若い選手たちに、プロに必要なクオリティを要求していってほしい。J3のリーグ戦は残り11試合。この機会を無駄にしてはならない。

 

 

 

 

 

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