「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【直前インフォメーション】J2‐24[A] 清水エスパルス戦のポイント(2016/07/20)

■実況ブースに静寂を

「試合展開にもよりますが、おそらく清水戦は3バックで、ウイングが張り出す形になると思います。そこで自分の仕事は何か。クロスです。途中から投入され、その仕事を託されることになる。前節の長崎戦のように早い時間に失点する展開はやはりしんどいですね。無失点で持ち堪える時間を長くできれば、勝つチャンスが出てくる」

と、古巣との対戦に意欲を燃やす高木純。清水という土地に対し、あらためて思いを深める今日この頃だそうだ。

「そこにいるときはわからないことってたくさんあるんだなと。中学に上がると同時に熊本から清水に引っ越し、28歳まで特にありがたみを感じることもなく、何事もごく当たり前のことと受け止めて生活していました。離れてみて、自分は清水が好きなんだなと思う機会が増えましたね」

ちょっと純平さん、聞いているこっちは若干のさみしさが湧き上がってきます。

「いまはもちろんヴェルディですよ。ヴェルディのために戦う。清水で自分のことを応援してくれる人たちには、おれはまだまだやれるぞ、終わってないぞというところを見せたい」

そして、僕は高木純と渡邊アナが旧交を温める様子を横で見ていた。

「私は静岡の人間ですが、試合実況では中立の立場ですから」と渡邊アナは強調するが、どちらにも感情を傾けない言葉なんてつまらない。実況にも土地柄が表れてこそ、両チームの対戦が熱を帯び、ワンプレーを伝える声にコクが出る。

アウェーに乗り込むこちらにも好材料はある。清水戦の解説をする秋田豊さんは、今季東京Vのゲームを担当し、2戦2勝と相性抜群だ。

僕は東京Vが清水を倒す、劇的な幕切れを想像する。清水サイドのゴールにシュートが決まり、オレンジのスタンドにしじまが広がる。一瞬、静まり返る実況ブース。言葉を探す渡邊アナ。

「勝利の立役者は30番。高木純平だ。清水の……ヴェルディの高木純平、今季初得点です」

なんて実況が聴けたら、サイコーの気分だ。

 

※【直前インフォメーション】は、試合当日のキックオフ4時間前に更新します。スタジアムへ向かう電車のなかや、待ち時間のおともにどうぞ。

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