「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【この人を見よ!】vol.2 左のスペシャリストとして~DF6 安在和樹~(2016/03/09)

ダッシュ、ダッシュ、ダッシュ。

安在の全力ダッシュ!

■「おまえは相撲取りか!」(冨樫監督)

東京ヴェルディユース94年組のトップランナー、五輪代表で10番を背負う中島翔哉(FC東京)は安在の眼にどう映っているのだろう。

「翔哉はすごいのひと言です。サッカーが好きすぎる。漫画の世界の住人みたい」

かすった程度ではあるが、一度は五輪代表に呼ばれている。先日のリオ五輪アジア最終予選、日本は幾多の困難を乗り越えて頂点に立った。

「結果が出てよかったなあと。ピッチに立てなかった悔しさがなかったわけではないですけど、常連組ではなかったのでそれほど大きいものではなかったですね。ほんの少しですが、五輪代表を経験できたのは価値があったと思います。自分にとっては初めての代表で、知らないことばかりでしたから」

サッカー以外も初めての出来事に好奇心はくすぐられる?

「知らない人と会うのはわりと好きですね。ストレスは感じない。その人がどんな仕事をしているのか興味があります。それで自分に役立つことは吸収できればと」

安在が左サイドバックを本職とするようになったのは、ユースの1年目からだ。それまでは中盤の底で華麗にパスをさばくゲームメイカー。ボランチの仕事に未練がないわけではなかったが、「まずはプロになるのが目的だった。それに近づけるのなら」と意欲的に取り組んだ。

こういったことは育成の指導者が意見を出し合い、方向性を定めるのだという。冨樫監督はジュニアユースまでの安在を振り返って言う。

「センターサークルのなかにいて、左へポーン、右へポーンと蹴るだけ。円から出たら負けだと思ってるだろう? おまえは相撲取りか! と」

安在の言い分はこうだ。

「だって、それで勝てるんですもん。前線にスピードのある(高木)大輔がいて、菅嶋(弘希/ジェフユナイテッド千葉)に外山(凌/阪南大3年)。裏に蹴っておけば全部パスが通り、点を取ってくれた」

勝利に足る仕事をすればいいという合理的な思考。一方で、安在がユニークなのは、定められたルールの範囲内で目的を達するために手段を講じる抜け目なさにある。

「たとえばミニゲームで、オフサイドの有無をこちらが説明しなければ、アンカズは必ずオフサイドなしと解釈してゲームを有利に運ぼうとします。そこは彼の面白さですね」(冨樫監督)

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