大宮花伝

新体制初勝利にアウェー今季初勝利。“サブ組”の意地が導いた“ダブル”【千葉戦/マッチレビュー】

■天皇杯全日本サッカー選手権2回戦・6月7日(水)19:00キックオフ
フクダ電子アリーナ/2,281人
ジェフユナイテッド千葉 0-1 大宮アルディージャ
【得点者】大宮/50分 中野誠也

▼「報われる瞬間っていいな」

試合終了のホイッスルが鳴ると同時に凱歌が響いた。約2カ月と長らく待ち望んだ白星がようやく手に入り、それは原崎体制と今季のアウェー、それぞれの初勝利になってダブルの喜びに。リーグ、天皇杯と大会は違えども今のチームにとっては勝つことが何よりも大事で、原崎監督や選手らの晴れやかな表情を見て心から安堵する。

原崎監督はアウェーサポーター席付近でお辞儀を繰り返し、平日のナイターにも関わらず駆け付け、声援を送り続けてくれたことへの感謝を伝えた。また、選手の一番近くで苦しむ姿を見てきただけに「勝てないなかでも日ごろから非常によくやってくれていた。報われる瞬間っていいな」と教え子たちの頑張りに胸を熱くさせた。

さらに無失点は公式戦で数えて14試合ぶりと実にひさびさで原崎監督が振り返る。

「(これまでは)簡単な失点があったなか、毎試合で起こった課題に対して選手がしっかり向き合って改善していくことがすごくスムーズにできている。そういう積み重ねが、この0というところにつながったのかなと思う」。

千葉戦は3日前のリーグ水戸戦から先発10人が入れ替わった。

中野誠也は「いわゆる練習試合のメンバーでできた。みんなウキウキしてできたかな」と試合に飢えた面々が並んだ。原崎監督は戦前に「勝てるメンバーをしっかりと作って臨みたい」と話しており、選ばれた中野は「みんながこの試合を楽しみに前日練習でもいいシーンが多くできていた」と自信を持って試合に入った。

ただ、前半は端から見て心配がよぎる内容で不安定なパス回しにシュートも少ない。これまでを考えると負けパターンのようにも見えた。一方、千葉はリーグ町田戦から先発を3人入れ替えただけで今試合への意気込みを感じる。決定機も多く、30分には末吉塁がポスト直撃のシュートを放つなど肝を冷やすシーンもあった。

それでも前半を0−0で終えられたことは大きい。リーグ戦の直近3試合は前半で失点しており、またいずれも追い掛ける展開だった。中野は「『前半を0で抑えれば後半にチャンスがくるぞ』という声も掛けられていたし、雰囲気も出ていた。そこが何よりの収穫」と話す。不格好だとしてもイレブン全員で体を張ってしのいだ。

原崎監督は決断も早く、ハーフタイムで交代カードを切った。前に行けず、あまり機能しなかった攻撃陣をテコ入れし、山崎倫に代わって阿部来誠を投入。右サイドハーフだった柴山を左、阿部を右に据えた。原崎監督は「シバに少しボールを預けようというところから修正した」と狙いを説明。結果的に、この一手が勝敗を分けた。

47分、柴山がドリブルでカウンターを仕掛けてシュートを放つなど敵陣に侵入できる場面が出始める。攻撃は明らかに好転して51分、大森理生のボール奪取から柴山が推進力を見せ、中野の右足シュートがゴールネットを揺らした。中野は「何が何でも決めるという気持ちを持っていた。チャンスが来ると思った」と感覚を研ぎ澄ませた待望の先制ゴール。

パスをつなぐテンポも前半とは変わってよくなり、55分にはプロ初出場でもある高卒ルーキーの阿部が三幸秀稔のマイナスのクロスからシュート。その5分後は柴山が好機を迎えるなど勢いは加速した。千葉の小林慶行監督は66分に4人替えで対抗。その1人の左サイドハーフ・椿直起に翻弄されたものの、75分に岡庭愁人をあてがって封じた。

79分には浦和学院高校出身の田中和樹にシュートを放たれたが、またもやポストが味方について難を逃れる。苦しい時間がありながらもリーグ先発組で途中出場した小島幹敏や アンジェロッティが攻守で落ち着き、勝てる雰囲気が漂い出してタイムアップ。原崎監督は指揮を執って4試合目での初勝利を「我々が進むべき道を少し照らしてくれた」と表現した。

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