「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

金銀飛車角落ちの中、驚きの人選。奈良輪・喜田も先発か!? [ナビスコ準々決勝第2戦柏戦プレビュー] 藤井雅彦 -2,126文字-

ラフィーニャと齋藤学を欠いた直近のリーグ第22節・ベガルタ仙台戦を『飛車角落ちの陣容』と表現した。だが今回は、それよりもさらに苦しいメンバー構成で戦わなければならない。言う4-4-2_後半戦なれば『金銀飛車角落ち』である。

最も長い離脱になるのが中町公祐だ。ナビスコカップ準々決勝第1戦・柏レイソル戦で右足の腓骨を骨折し、全治4週間見込みと診断された。しばらくは彼を欠いた状態で戦わなければならない。同じ試合で股関節に違和感を訴えた中村俊輔も第2戦出場は不可能だ。本人は「名古屋戦に間に合えば」と話しており、復帰は早くて来週末のリーグ第23節・名古屋グランパス戦になりそうだ。

意外だったのは、その試合で右足首をねん挫した兵藤慎剛の欠場である。これまでねん挫程度の負傷であれば歯を食いしばりながらピッチに立ち続けてきた“ハマの鉄人”だが、今回は痛みに勝てなかった模様だ。とはいえ中町のような長期離脱ではなく、中村のような持病でもない。休むことで状態は回復するだろうから、名古屋戦は大丈夫だろう。

そしてタイミングが悪いことに栗原勇蔵は出場停止。つまりラフィーニャ、齋藤、中村、中町、兵藤、そして栗原と主力6選手を同時に欠く。主力選手がこれだけ大量に抜けるのは、樋口体制になってから初めてではないか。極めて危機的な状況である。もっとも、右ひざの骨挫傷で離脱していた齋藤は金曜日から全体練習に合流し、試合前日は控え組ながら紅白戦にも出場した。時間限定の切り札として出場する可能性があり、遠征メンバーに帯同している。

それらの出入りがあった結果、先発には驚きの人選が待っていた。順当だったのは栗原の代役にファビオが入ることくらいで、そのほかのポジションには意外な選手が抜擢されている。

 

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柏3-4-2-1 前線は中村不在に伴い、システムを2トップに変更。伊藤翔とコンビを組むのは矢島卓郎だ。今シーズンは持病の股関節に悩まされ、復帰と離脱を繰り返していた。万全のコンディションになればポテンシャルは所属FWの中でも1、2を争う。ここへきて状態は上がってきており、満を持しての先発になりそうだ。明日、一発があるとしたら、この男。指揮官はその可能性に賭けた。

中盤に目を移すと、兵藤のいない左MFには奈良輪雄太、中町が離脱したボランチは富澤清太郎や三門雄大ではなく、喜田拓也がスタメン出場する模様だ。奈良輪はここ最近、中盤のサイドでの出場機会を増やし、ついに先発の座を勝ち取った。本来のポジションでないことは明らかなだけに、どのようなパフォーマンスを見せるかは楽しみでもあり、不安でもある。

喜田もここへきて少しずつ指揮官の信頼を勝ち取り、ついに先発に抜擢された。富澤や三門の評価が下がっているのは解せないが、それと喜田の成長は別問題だ。この試合が終わるとU-21日本代表としてアジア大会に出場するためチームを離れる。成長が見込めるタイミングだけに、この試合をきっかけにひと皮むけられるか。小椋祥平とともにアグレッシブなプレーに期待したい。

勝ち上がりには最低2点が必要だが、昨年のことを思えばハードルは高くない。ベストメンバーなら十分に可能性がある条件なだけに、今回のメンバーでどこまで迫れるか。敵は相手ながらも、まずは自分たちの役割や戦い方を明確にする必要がある。すでにビハインドの状態からスタートするのだから、どれだけ攻撃を念頭において立ち回れるかがポイントになるだろう。

 

【この試合のキーマン】
GK 1 榎本 哲也

第1戦終了後、榎本哲也は2失点目の場面を悔やんでいた。工藤壮人の動き出しとシュートが素晴らしかったのはたしかでも、ゴールまで角度がなく、コース自体はかなり限定されていた。直近のリーグ第22節・仙台戦と柏戦の前半のパフォーマンスを踏まえれば、難しいとはいえストップできそうな流れだった。だからこその悔恨であろう。

明日の第2戦では、特に攻撃面がクローズアップされるのは間違いない。勝ち上がりには2点以上が必要で、1得点しかできない場合は自動的に敗退が決まる。たしかに攻撃陣の爆発が欠かせない。

しかし、そういった流れを生み出すのに、GKがまったく無力かといえば、そんなことはない。点を取れずに時間が経過すれば前がかりに戦わざるをえなくなり、カウンターからのピンチが訪れることも容易に想像できる。そんなときこそ榎本にとっての見せ場で、流れを変える大チャンスでもある。
良い攻撃は、良い守備から始まる。それを体現してほしい。

 

 

 

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