「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

柿谷目当てのライト層をマリノスのファンにできたら最高の展開 [J25節C大阪戦プレビュー] (藤井雅彦) -2,051文字-

今をときめく柿谷曜一朗を日産スタジアムで迎え撃つ。日本代表に選出され、Jリーグで最も勢いに乗っている選手と言えるだろう。時の人見たさにスタジアムに足を運ぶ人も多いと思われ、前売りの段階でクラブの目標値を超える数字を叩き出しているという。土曜日までは天気も大丈夫そうで、天候に恵まれて当日券が順調に伸びれば3万人オーバーも不可能ではなさそうだ。ビジター席が桜色に埋まるとは思わないが、ライト層をたくさん呼び込んだほうが次につながる。柿谷を動機に、結果的にマリノスのファンになったら最高の展開だ。

4-2-3-1C大阪 無論、そのためには柿谷を止めなければならない。前回対戦では警戒していながら、見事にやられた。アウェイのセレッソ大阪戦は高温多湿と合わせて嫌な印象が強く、今年もそういった結果になってしまった。当時は代表入り前の柿谷だったが、すでに風格が漂っていた。抜け出てからのボールコントロールにまったくブレがなく、シュートも落ち着いて流し込める。最も警戒していた形でやられてしまった。

その場面をGK榎本哲也はこう振り返り、今回への対策とした。

「柿谷がスルーパスに抜けたあの場面。彼はトラップする前にほんの少しだけGKを見た。いや、正確にはわからないけど見たような気がする。それで自分の飛び出しが一歩遅れてしまって、やられた。仮に視線を気にせず飛び出してもループシュートでやられたと思う。完全に自分の間合いではなく、彼の間合いだった。すごいな、と思った。ああいう場面を作られたらかなり苦しいので、そうならないことが大事」

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トラップ&シュートばかりに注目が集まるが、柿谷はさらにその一つ上の段階に進んでいる。榎本が話したように、裏のスペースに抜けられると劣勢は否めないため、ディフェンスラインを上げることは危険にも映る。下がってスペースを消したほうがいいという考え方もあるだろう。しかし、それをするとマリノスの良さが出なくなってしまう。全体をコンパクトに保ちつつラインを上げることで前線からの守備が機能し、独力で突破できる齋藤学を生かしたい。

4-2-3-1_2013_2st あるいは、先制に成功した場合はラインを下げることも考慮すべきだろう。そこはボランチとして戦列に戻る富澤清太郎の判断に期待したい。前にいる中村俊輔、後ろにいる中澤佑二の両重鎮とコミュニケーションをとり、最善の判断を求めたい。「90分間で勝てばいいのがサッカー。そのためには序盤はボディブローも必要になる。ただギャンブルボールで失う展開は避けたい。落ち着いた判断で戦いたい」とイメージしている。

不安要素を挙げるとすれば右SB小林祐三の出場停止か。不動の右SBとして、特に最近のパフォーマンスには目を見張るものがあった。もともとの守備力に加えて、高い位置で出て行ってからの仕事にも磨きがかかっていた。危機察知能力も高く、鹿島アントラーズ戦ではGKが抜かれたシュートをスーパークリアで救う場面もあった。勝敗を決するポジションではない、という考え方もあるだろうが、最近の小林は勝敗にも関与する働きを見せていたのだ。不在が大きな穴になるかもしれない。

代役は奈良輪雄太となる。天皇杯2回戦・ヴァンラーレ八戸FC戦では左SBとして出場し、後半からはメンバーチェンジによって右SBを務めた。後半途中からは再び左サイドに戻ったが「右のほうがスムーズだった」と本人は手応えを得ている。樋口靖洋監督はこのセレッソ戦を見据えて後半から右サイドで起用したようで、準備段階としては悪くない過程と言える。ただし小林と比較されると苦しいものがある。経験値の差は明らかで、周囲との連係や関係性でも小林が上だ。奈良輪はとにかくアグレッシブな姿勢を貫き、近いポジションの選手がフォローする形をとるのがベストだろう。

最後に、このセレッソ戦の位置付けについて樋口監督は力強く言った。

「セレッソをその気にさせないために、ここで勝つと与えるダメージは大きい。セレッソは若い選手が多いし、勢いに乗ったら強い。しっかり叩きたい。いや、叩かないといけない」

 柿谷を筆頭に若い力が躍動するセレッソ大阪を今シーズン無敗のホームで叩き、勝ち点差を広げたい。そうすれば優勝争いはもちろん、『ACL出場権獲得』に大きく近づくことになるだろう。残り10試合のカウントダウンがスタートする一歩目はとても重要な一戦だ。

 

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