埼玉スタジアム、6年連続勝利へ [J17節浦和戦プレビュー] (藤井雅彦) -1,653文字-
1勝1分1敗。リーグ戦再開後のマリノスの戦績である。「できれば4連勝して勝ち点12を取りたい」という樋口靖洋監督の野望は脆くも初戦の大分トリニータ戦で崩れ、次のセレッソ大阪戦では勝ち点3どころか勝ち点0に終わった。ナビスコカップ準々決勝・鹿島アントラーズ戦での2連勝が嘘のように躓いてしまった。
しかし続く大宮アルディージャ戦で見せたパフォーマンスは特筆に値する。ポジションに関係なく全選手がファイトしていた。端的に言うと走っていた。「走らないチームは勝てない」と中澤佑二。裏返すと、しっかり走ればマリノスは勝てる。技術や戦術理解度に長けるチームだからこそ、運動量が結果を大きく左右する。
迎える浦和レッズ戦もしっかり走れるだろうか。大分戦やセレッソ戦でイマイチのパフォーマンスだったマルキーニョスは正直、蓋を開けてみなければわからない。ゴール前での最終局面で力を発揮したとしても、90分トータルでの貢献度がどうか。期待したいところではあるが、計算するのは危険かもしれない。
トップ下の中村俊輔は大宮戦で素晴らしい働きを見せた。ゴールやアシストといった目に見える結果ではなく、トップ下の位置から守備のスイッチを入れた。中村が走れば、全体も走る。その影響力は絶大だ。逆に中村の動きが鈍いと、チームはなぜか中村に頼る傾向がある。ボールこそ集まるものの効果的な攻撃にはつながらない。すると悪循環に陥る。
相手も同じ条件とはいえ、この暑さの中での4連戦の4試合目だ。蓋を開けてみたら特にベテラン勢は疲弊していても不思議ではない。しかも浦和にはボールを回されることが前提としてある。「浦和や広島のサッカーに対する免疫はある」と中村は話すが、守勢に回りすぎる展開は好ましくない。ある程度はボールを奪いに出て、結果としてボールを持たれるのは仕方がない。いずれにせよ最低限の運動量は必要となる。
前節の大宮戦に象徴されるように今シーズンは不必要な失点が目立つとはいえ、やはりマリノスは守備ありきのチームである。特に浦和のような特殊なフォーメーションを採用しているチームに対してはその傾向がより強くなる。「ウチのやり方でハメる時間が長くできればいい」と樋口靖洋監督。攻撃時は[4-1-5]に近い陣形をとる浦和のビルドアップをいかに封じるか。最初の焦点となる。
攻撃で鍵を握るのはセットプレーだろう。再開後の3試合はいずれも不発に終わっている。大分戦で兵藤慎剛が決めたゴールこそCKのこぼれ球ではあるが、中村のキックにダイレクトで合わせたゴールはない。忘れた頃にセットプレー。これがマリノスの勝利の方程式だ。決めるのはここまでノーゴールの中澤佑二か、あるいは代表選出された栗原勇蔵か、はたまたボランチの富澤清太郎か。
そして初めてA代表の選出された齋藤学はどのようなパフォーマンスを見せるのか。期待され、そこで結果を残してこそ日の丸を背負うに相応しい。サポーターの視線、メディアの注目を感じつつも、目に見える結果で力を証明してほしい。重圧がかかる状況で結果を残さなければ、さらなるステップアップは望めない。
早いものでこの浦和戦が終わるとシーズンのちょうど半分を折り返す。さらに日本代表が東アジア杯に出場するため、わずかではあるがブレイク期間となる。そしてこの試合が終わると移籍ウインドーが開き、Jリーグに所属する選手の出入りがある。事情によって大きく様変わりするチームもあるだろう。後半戦を迎えるにあたって勢力図に多少なりとも変化があるはず。
いまのマリノスはシーズンを通して安定した力を発揮できるチームになりつつあるが、それでも後半戦もいまの順位や成績を維持できる保証はない。勝てるときにきっちり勝たなければいけない。したがって浦和戦でのテーマは「いいゲームよりも勝ち点3をどうやって取りきるか」(中澤)の一点に尽きる。
08年から5年連続で勝利している埼玉スタジアム2002でトリコロールが躍動し、勝ち点3をもぎ取る。