「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

力の差を誇示する日 天皇杯横浜FC戦 藤井雅彦プレビュー

 

樋口靖洋監督はこの一戦に際して、メンバーを落とす考えは毛頭ないようだ。直近のリーグ戦まで2試合出場停止だったマルキーニョスが最前線に戻り、1トップに君臨する。鹿島アントラーズ戦で退場してからは練習と練習試合で違いを見せていた。「爆発してくれるはず」という指揮官の期待に、ゴールという結果で応えてくれることだろう。

 

マルキーニョスのようなFWはJ2ではそうそうお目にかかれない。ヴァンフォーレ甲府のダヴィなどはそういった類かもしれないが、実際に彼がJ2得点王争いを断トツで走っているのだから違いは歴然としている。横浜FCのディフェンス陣は慣れないレベルのFWに苦労するに違いない。マリノスは最近のリーグ戦2試合をいずれもスコアレスドローで終えており、1点を取れずに泣いた。近況の悩みを解決してくれるのは背番号18だ。

ストライカーの復帰に触発されるのは小野裕二だ。大宮アルディージャ戦で決定機を外し、サンフレッチェ広島戦ではPKを失敗した。いずれのゲーム後も「自分の責任」と口にしており、責任をとる覚悟があるならばゴールを決めなければいけない。ファーストシュートをきっちり枠に飛ばして決めるマルキーニョスの冷静さを見習ってほしい。技術はそう簡単に向上しないが、精神的な問題はきっかけ一つで解消・改善できる。ビジュアル含めて、マリノスで最も注目すべきは背番号10。ダービーという大舞台で存在感を見せたい。

ピッチ外の観点から見ると、この大切な一戦が大箱の日産スタジアム開催なのは残念でならない。「できれば満員の三ツ沢で戦いたかった」(樋口監督)。水曜日のナイターで注目度の低い天皇杯であることを考えれば、集客に苦戦するのは想定できたこと。したがって当初は三ツ沢開催の予定だったのだろうが、このカードが決まって混乱を予測してか、開催スタジアムを変更。これで集客できなければ本末転倒と言わないまでも、トーンダウンは必死。盛り上がりに水を差すことになりかねない。天皇杯という大会が抱える問題はここにもある。

観客が入らない日産スタジアムという環境はとても不気味だ。二階席が解放されず、スタンドがガラガラの状態だと、ナイター開催もあって静けさやどことなく不気味さが漂う。最も大切な平常心を保てなくなる。害を被るとすれば、それは格上のマリノスの選手たちで、恩恵を預かるのは格下の横浜FCであろう。

横浜FCは昇格争いの真っ只中であり、リーグ戦のメンバーから大幅に入れ替えてくるかもしれない。普通に戦えれば戦力差は明らかなのだが、それをなかなかできないのがダービーの常である。90分で終わらず、延長に突入しての120分、もしくはPK戦までもつれるかもしれない。

いずれにせよ、結果がすべてである。2007年8月11日のような大味な展開にならずとも、最少得点差の勝利で十分だ。次にいつ横浜ダービーがあるかわからない。負ければ、その次が訪れるまで横浜FCを見上げ続けなければいけない。そんなことがあってはならない。歴史と伝統、そして力の差をJ2クラブに誇示しなければならない。

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ