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松木玖生、東京最後の日ドキュメント【Report/無料公開】

 

撮影:後藤勝


 トラメガを持った松木玖生が「今日は集まっていただきありがとうございます」と第一声を発すると、飛田給に詰めかけた人々から声が沸き、拍手が起こった。
 
「自分は海外に移籍するという決断に至ったんですけど、そのなかでもチームメイトの存在はすごく大きかったですし、やっぱりファンサポーターの方々の、みんなのおかげで、自分もこのような形で海外移籍することが出来たと本当に思っているので。みなさんの想いを胸に、自分も羽ばたいていけたらいいかなと思っています。本当に今日はありがとうございました」
 
 背番号7のキャプテンからのメッセージは約1分間つづいた。これが最後の挨拶だった。
 
◆子どもたちにお手本となれるような存在でいたい
 

撮影:後藤勝


 J1第23節アルビレックス新潟戦当日の7月13日、FC東京は公式に「海外クラブへの移籍を前提とした手続きと準備のため、本日の活動をもってチームから離脱」する旨を告知した。試合終了後にマイクをとる場面はあったが、正式な退団セレモニーは開かれず、7月19日の「ふれあいイベント」実施に至った。
 
 イベント参加の募集締切は7月17日の14時と間がなかったが、多数の応募があった。隣接する味の素スタジアムから、翌日にLIVEをおこなうTWICEのリハーサル音が聞こえてくるなか、ペデストリアンデッキの先にある武蔵野の森総合スポーツプラザ 多目的スペースには200名の当選者を含む560人が松木との交流に駆けつけた。
 
「すごいと思いました。平日のこの時間なので子どもたちも多かったですし」
 
 松木によれば、出勤中の仕事場を一度抜け出てきたという会社員もいたという。どうしてもこの機に一度、会って挨拶をしておかなければ──という想いでやってきた、そういう熱い人々ばかり。そして松木が言うように、来場者には子どもも多かった。この日の松木は終始、優しい笑顔に満ちていたが、特に子どもに対するそれは柔らかかった。ボードの前で写真を撮り、言葉を交わす際に「将来いっしょにサッカーをしよう」と声をかける場面もあった。
 
「多分自分を知っているのは、サッカーをやっている子どもたちだと思いますし、やっぱりそういう子どもたちにお手本となれるような存在でいたいですし。こういった今回の交流会で色々と『頑張ってください』と声をかけてくれた子どもたちといっしょに出来るように、自分も頑張りたい」
 

撮影:後藤勝


撮影:後藤勝


 16時から順次「ふれあい」を実施。写真撮影やサインをおこない、そのすべてが済んだあとに、デッキの一箇所に集まりその時点で現場に残っている全員で記念撮影。一段高いところからトラメガで松木が挨拶の言葉を発し、そのあと屋内でメディアに対して10分間の囲み取材というスケジュールだった。
 
 記念写真撮影では屋上と階下のオフィシャルカメラマンやクラブスタッフの声掛けで様々なパターンを実施。全員でレインメーカーのポーズをとったあと、松木玖生チャントを歌おうという流れになり、人々がもじもじとしてなかなか歌い出せなさそうな空気になりかけた時には、過去にサポーター経験のあるスタッフが咄嗟に「ラーラーラ、ラーラーラーラ」の歌いだしで口火を切り人々をノセるナイスアシスト。限られた時間で出来るかぎり最大の交流を図り、その狙いは概ね達成された。
 

撮影:後藤勝


撮影:後藤勝


 この日の松木には、名残惜しさを味わう気持ちと、今後に向けたスタートを切る気持ちが同居しているようだった。
 
「このタイミングの移籍でチームにはすごく迷惑をかけるところもわかっていましたけど、しっかりと選手のみんなが自分を後押ししてくれましたし、このあとの後半戦、より難しい試合になっていくとは思うんですけど、このメンバーならやっていけると思いますし、キャプテンに頼ることなく全員でいいチームをつくっていければ。このチームは上位に食い込まないといけないチームだと思いますし、そこは自分もあまり心配してないところではあるので。海外から毎回試合を観るので(※はにかみ笑い)、そういったところでいろんな選手とコミュニケーションをとっていけたらいいかなと思います」
 
 新潟戦のあと数日はトレーニングを休み、今後に向けての実務をこなしつつ、19日はトレーナーとマンツーマンで練習をしたあと「ふれあいイベント」の現場にやってきたが、これからはいよいよ欧州での生活が待っている。大先輩の長友佑都が発した「10年はやってほしい」という言葉に対しては「自分も(長友)佑都さんみたいにすばらしいキャリアを築きたいです。その中でも15年くらい……(一同笑)そのくらいの気持ちでやらないと、もちろんあっちでは通用しない思いますし。ユウトさんを超えられるようにしたい」と、アンサーをはじき出した。
 
 残るミッションは欧州での成功とA代表入り。はたして、日の丸をつけての長友との再会はなるのか。東京のファンにとっては関心を抱きながらその後を気にすることが出来る、そういう確信を得られる別れの日だった。
 
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