お決まりの言葉にこそ、その監督の思考がにじむ【2023 J1第19節 FC東京vs.柏 本音Column】

東京が熱狂というフレーズを現実のものにしようとするピーター東京。Photo by HIROTO TANIYAMA(撮影:谷山央人)
それでは、いつものように試合レポートのあとに書くコラムを始めていきたいと思います。
と言いながら、チームづくりは中長期で判断するものなので、どうしても前体制の頃まで遡っていろいろと考えてしまいます。今年、アルベルさんの愚痴と言えば主に「けが人」と「日程」でしたが、考えてみるとこれを言いたくなるのも無理はない。たとえば日程。シーズン後半戦、FC東京が予定している遠方のアウエーゲームは大阪と新潟があるだけで、ほかは全部前半戦に集中していました。けが人にしても、夏のウインドーが開くまでは補強が難しく、実際ここに来て長期離脱中の中村帆高の分の枠を埋めるサイドバックをひとり獲得したわけで、評価をするなら選手が揃っていない状況を踏まえてくれよ、という気持ちになるのも当然ではないのかなと思います。
問題はどうして愚痴がいつも言い訳めいた他責に聞こえるかですが、これは監督の職業柄、致し方ないところもあります。というのも、監督は基本的にはなんでも屋ではなく、一種類の料理をつくりつづける料理人だからです。頼まれれば、アルベル前監督はアルベル丼を、ピーター クラモフスキー監督はピーター飯をつくるのが仕事。その味が合うか合わないかはお客さん次第ですし、いつもの手順で料理をつくっているのにうまく出来ないのだとすれば、それは外部要因によるものだと判断してもおかしくはない。実際、けが人が発生せずプレシーズンのメンバーで固定出来ていたら、そして日程がもっとフラットだったら、順位はもっと上だった可能性はあります。
その意味では少し不利な条件で仕事をしなければならなかったのがアルベル監督、補強もあり近場での試合が大半という好条件で仕事が出来るのがピーター クラモフスキー監督ということで、前任者にちょっと同情しますね。監督を交代するならするで昨年末に交代していれば前監督も含めて各方面がそれほど苦しまずに済んだと思いますが、その昨年末に前GMが退任してタイミングを逃しているところが不運と言うべきか、いずれにしてもこの半年間のズレはもったいなかった。言い換えれば、昨年末の時点では周囲もアルベル前監督についていこうと考えていたはずで、プロジェクトが半ばで頓挫したことは残念でした。
しかし終わったことは仕方がない。これからはピーターの物語を綴っていかないといけません。
◆繰り返される同じ言葉の重要性

右サイドバックで活躍の小泉慶。白井康介の加入後はどうなるか。Photo by HIROTO TANIYAMA(撮影:谷山央人)
現監督がつくるピーター飯は、最終的には横浜F・マリノスやモンテディオ山形から抽出可能な主要素に近いものになっていくのではないかと思います。ですが、一週間に出来るセッション数には限りがある。したがっていきなり昨シーズン後半の山形のようなボール保持が観られるわけではなく、初戦の名古屋グランパス戦、そしてその次の柏レイソル戦と、ピーター東京はその都度、一見別々の戦い方であるかのような姿をのぞかせました。
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