【無料掲載】栃木SC U-18は”2年連続昇格”の快挙。背景に「強度の高さ」「要求し合う」「栃木を愛する」【レポート】(23.12.7)
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関東|高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ 2023|JFA.jp
▼矢板中央Bに勝ち切り、優勝と昇格を掴む
12月3日に行われたプリンスリーグ関東2部最終節。栃木SC U-18は矢板中央Bに1対0で勝ち切り、リーグ優勝、そしてプリンスリーグ関東1部への昇格を決めた。これで昨年の栃木県リーグ制覇、プリンスリーグ関東2部プレーオフ制覇に続き、”2年連続昇格”の快挙を成し遂げた。
矢板中央B戦の前半はペースを握り、村上竜規とのコンビネーションで抜け出した揚石琉生が相手GKに倒されてPKを獲得。これを自ら決めて先制に成功した。
だが、後半は一転して苦しい展開に。矢板中央Bが選手交代によって前へ圧力を高めると十八番とするロングスローやCKなどのリスタート攻勢に晒されたが、GK熊倉成希を中心とした鉄壁の守備でゴールを許さなかった。
試合終了のホイッスルの瞬間、拳を突き上げて喜びを爆発させる選手たち。ピッチ外から雄叫びをあげながら駆け寄る仲間たちと抱き合い、プリンスリーグ関東2部制覇の味を分かち合った。
試合後、ボランチとして奮闘した永井温心が振り返った。
「自分たちの力を出し切れば勝てると信じていました。この1年間、後輩たちにプリンスリーグ関東1部の舞台を残すことを目標にやってきたので、正直、ホッとしましたね。本当は先々週の桐光学園戦、先週の水戸ホーリーホックユース戦で昇格を決めたかったですけど、最後の試合でしっかり勝ち切れたことは力だと思うし、自信になります」
決勝ゴールを挙げた揚石も頬を緩ませていた。
「最後の時間帯はきつかったですけど、でも、終盤でも走り切れる力を発揮できたし、僕らの持ち味を出せたと思います。これまでのきつい練習があったからこそ、その成果が試合に出たし、勝ち切れる試合が増えたんだと思います」
▼栃木SC U-18が強かった理由
試合後、応援してくれたサポーターや保護者たちに優勝と昇格を報告する選手たち。その場でも、キャプテンの石川丈慈、佐藤佑磨らがこう口を揃えた。
「僕たちはきつい練習をしてきたので――」
選手たちによれば、”きつい練習”とは狭いグリッドでの6対6のゲーム形式などを指す。ボールがラインを切ってもすぐにボールがピッチ内に供給され、ゲームが途切れない。ピッチ内で攻守のトランジションが頻発する、高い強度を維持したまま続くゲームだ。
シンプルなメニューだが、こういった高い強度の練習メニューを1年間通して繰り返した。その上で掴んだ”2年連続昇格”の快挙だった。選手たちのメンタルが強くなり、勝ち切れる試合が増えていったことは只木章広監督も認める。
「簡単にいえば、僕らのトレーニングは試合へ向けた調整ではないんです。木曜日に紅白戦をやるのですが、週末の試合のスタメンを勝ち取るために各自がその紅白戦でバトルしないといけない。その紅白戦に向けて、オフ明けの火曜日は準備、水曜日も準備、木曜日のバチバチの紅白戦でメンバーを決めて、その後調整に入っていく。シーズン中にケガをする選手はいっぱいいたし、でもトレーナー陣もしっかり回復させてくれました。試合に向けて調整していこうという考え方は一切なかった。それを1年間通して積み重ねてきたので、自ずと選手たちが逞しくなったということです」
揚石らの世代はジュニアユース時代からタレントが揃い、仲が良く、多くの選手たちが揃ってU-18に昇格した世代だった。揚石らを筆頭にユース年代でも1年生から出ている選手も多く、2年生になると彼らがチームの屋台骨になった。だから、今年のプリンスリーグ関東2部を戦った3年生たちは舞台慣れしていた。揚石がいう。
「僕らはジュニアユースのときからずっと一緒のメンバーですから、オフではおちゃらけているし、本当に仲がいいんです。でも、いざ練習になれば全員が声を出して、自分の感じることを伝えて、要求し合って、高め合いながら成長することができたと思うし、そういう雰囲気が常にあったことが良かったと思っています」
高い強度の練習に全員が真摯に向き合い、そのなかで互いの考えをぶつけ合い、高いレベルを要求し合う――。
世代問わず、プロ・アマ問わず、優勝・昇格を掴み取るような強いチームは必ず大事なものを握りしめている。
栃木で生まれ育った選手たちが一丸となり、プリンスリーグ関東1部の舞台を勝ち得たことも大きな意義がある。只木監督がいう。
「いい選手がいっぱいいないと何も達成できない、なんて僕は考えません。栃木の田舎育ちだからできないではなく、鍛えて、逞しくなって、力を発揮できるから勝ち取れるんだ、とやってきました。『それが俺たちの強みだよね?』という考え方です。栃木で育って、栃木を愛している、その力で勝負できる。そういう考え方があってもいいじゃないですか」
来年のプリンスリーグ関東1部には、横浜F・マリノスユース、鹿島アントラーズユース、浦和レッズユース、東京ヴェルディユース、といった強豪がひしめく。関係ない。只木監督は豪語する。
「やることは変わりません。新たなメンバーで新たな挑戦をするだけです。プリンスリーグ関東1部でも、プレミアリーグでも、何が大事なのか、それさえ押さえていれば問題はないと思っています」