【フットボール・ブレス・ユー】第72回 未知数を強みに変える(24.10.28)
第72回 未知数を強みに変える
10月19日、J1第34節の浦和レッズ戦、東京ヴェルディは綱島悠斗の2ゴールで2‐1の勝利を収める。4試合を残し、J1残留が確定した。
これがどれほどの偉業か。いま一度、書き記しておきたく思う。
16年ぶりのJ1に挑んだ今季、東京Vのトップチーム人件費は推定10億円前後。リーグで最もチームのバジェットが小さく、J2のトップグループである清水エスパルス、横浜FC、V・ファーレン長崎よりも下なのは明らかだ。言うなれば、23番目からのスタートだった。
Jリーグが公表するJクラブ個別経営情報開示資料によると、近年、リーグ最少のチーム人件費でJ1に残留した例は、2019シーズンの大分トリニータ(9位/8億6000万)、2023シーズンのアルビレックス新潟(10位/8億8900万)がある。レアケースには違いなく、ほとんどは降格の憂き目に遭っている。
加えて、今季の東京VはJ1の経験値が極端に低いチームだった。
開幕の横浜F・マリノス戦(1‐2●)のメンバーリストを見れば、両者の差は一目瞭然である。JI通算100試合、200試合を超える選手がゴロゴロいる横浜FMに対し、東京Vは18人のうち10人がJ1未経験。40試合4得点の山見大登が最も大きい数字だった(129試合5得点の宮原和也は故障でメンバー外)。18人はもちろん、登録選手全員が束になっても、水沼宏太の持つ377試合46得点に遠く及ばない。
チームの戦力値を推し量るには、選手の持つ実績と付いている値札を判断材料とするしかない。浦和戦後、城福浩監督が「このクラブは最終節まで残留争いに巻き込まれるだろうと多くの方々が思ってらっしゃったでしょうが、それを非難するわけではないんです。極めて妥当な評価」と言ったのは、そのためだ。
価値の低さを強調すると選手は気を悪くするかもしれない。しかし、これが客観的な評価であり、事実だ。J2以下の実績は当てにならないとまでは言わないが、J1でのパフォーマンスを担保するものではない。
ほかのチームにはない強みが東京Vにあったとすれば、すべての選手が未知数、すなわち可能性を有していたことであり、海千山千の指揮官が率いていることだった。
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