「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【フットボール・ブレス・ユー】第57回 紫紺の友 ~堀孝史と江尻篤彦~(22.2.2)

第57回 紫紺の友 ~堀孝史と江尻篤彦~

静岡キャンプに入る前、堀孝史監督の囲み取材があった。

佐藤凌我、長沢祐弥に加え、今季は松本山雅FCから阪野豊史、大宮アルディージャから山越康平、新人の稲見哲行、加藤蓮を獲得し、明治大出身の選手は6人の大所帯となった(SC相模原に期限付き移籍中の持井響太を含めれば7人)。自身が紫紺のシャツを着てプレーしていた頃と比べ、後輩たちを見て何か思うところはあるか。

「自分たちの時代とは全然違いますね。優勝を争うような強い大学ではなく、毎年、1部と2部の入れ替え戦に出ていたチームでしたから」

明治大出身の名選手と言えば、真っ先に挙がるのが往年の日本代表で釜本邦茂との名コンビで知られる杉山隆一。次に、日産自動車・横浜F・マリノスのレジェンドで、代表でも一時代を築いた木村和司。

日本サッカー界においては、早稲田大と筑波大の出身者が特別な地位を占める。いまでこそ明治大は毎年コンスタントに多数のJリーガーを輩出する名門だが、二大派閥には遠く及ばない、いわゆる傍流だ。

以下、役職、敬称を略す。

1986年、堀は鎌倉高から明治大に進学。隣には、高校選手権優勝の金看板を引っさげて入ってきた清水商業高の江尻篤彦がいた。大学4年次は江尻キャプテン、堀副キャプテンの体制となった。

同期でほかにもサッカー界で活動する人物がいてもよさそうなものだが、「思い当たらないです。おそらく、いないと思います」と堀は言う。現在、縁あって明治大の1967年組が、東京ヴェルディで現場と強化のトップという要職を担っている。

1月25日、静岡キャンプ2日目の午後。クラブの発案により江尻強化部長とメディア関係者の懇親会がセッティングされた。このご時世、場所は居酒屋とはいかず、宿舎の食堂でソーシャルディスタンスを取った茶飲み話である。

江尻は大学時代を振り返って、「自分は1年から4年まで全試合フル出場。これはちょっとした自慢かな。毎年、入れ替え戦に出る苦しいシーズンばかりで、なんでここにきちゃったんだろうと思ったものです」と笑った。

栄冠とは無縁だったが、4年連続で入れ替え戦に出場しながら1部に残り続けたのだから、なかなかの勝負強さだ。

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