「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【SBGニュース】永井秀樹前監督のハラスメント行為をJリーグが認定。クラブにけん責と罰金100万円の懲罰(21.12.25)

ハラスメント行為が認定された永井秀樹前監督。

ハラスメント行為が認定された永井秀樹前監督。

■クラブの管理監督責任。酌量すべき事実も

Jリーグは24日、「東京ヴェルディへの調査結果について 」オンラインの記者会見を開き、クラブに対し、けん責と罰金100万円の懲罰が決定したと発表した。

東京Vの設置したコンプライアンス委員会がJリーグに提出した報告書によると、永井秀樹前監督による選手やスタッフへの「サッカーの指導に不必要に攻撃的な言葉や暴言」「不適切な指導や不適切な取り扱い」「人格等を否定する言葉や暴言」といったハラスメント行為が認定されており、Jリーグが事実確認を行ったうえで裁定委員会にはかり、処分内容が決まっている。

萩原和之コンプライアンス室長は、問題発覚から懲罰に至った一連の流れについてこう話した。

「クラブの管理監督責任を実体として把握するために、社長や現場部門の管理職など具体的には7名の方々にヒアリングをさせていただきました。およそ3ヵ月、本件を担当する弁護士とともに中立の立場で調査を進め、一つひとつの事実認定を行っています」

これを受け、東京Vが管理監督の義務を怠り、ハラスメント行為の発生を防止する措置を講じておらず、並びにJリーグの社会的信用を大きく毀損したとして懲罰を科すと決めた。

一方で酌量すべき事実として、昨年末に経営陣の交代があり、ガバナンスの強化や改善を目的に社内規程、社内制度を変更していたこと、速やかにコンプライアンス委員会を設置し、アンケートやヒアリングの内部調査を実施したこと、相談窓口の設置や関連研修を実施したことを挙げ、自浄機能を持つ組織への変革が見えるとしている。

村井満チェアマンは言う。

「過去はこうしたことが許されていた、自分自身がそういう指導を受けていたことで、時代が変化していることに意識が追いつかず、悪意なき、もしくは自覚なき行為となっているのが問題の本質だと思います。社会が変わり、倫理観も時とともに変化していくもの。監督任せにせず、啓発や教育、指導を組織として行っていくのが重要です」

また、永井氏については「クラブとの契約は終わっている。規約に照らし合わせるとJリーグ関係者ではなく、懲罰権は及ばない」(萩原室長)とし、クラブの聞き取りのみでJリーグは直接コンタクトを取っていないという。このあと関係資料が日本サッカー協会(JFA)に送られ、指導者ライセンスについて審議される見込みだ。

永井氏のハラスメント行為は許されるものではない。だが、東京Vの関係者が今回の一件を一個人の問題行動と捉えているうちは同じことの繰り返しである。

クラブの体質的に権力が一ヵ所に集中する傾向があり、危険を回避するためのチェック機能が働きづらい。パワーバランスの欠如により何度も手痛い失策を経験し、それはクラブの成長を阻害してきた。つまり、組織のガバナンスの欠陥であり、クラブの土壌に関わる問題だ。この類いの教訓を得るのは初めてではないのだから、今度こそ実のあるものとし血肉化してもらいたい。

永井氏にはサッカーの指導に懸ける情熱が本物であるならば、すべての決着がついたあと自身の言葉で語ってほしいと願う。

 

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