「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【トピックス】検証ルポ『2021シーズン 緑の轍』第三章 ハラスメント疑惑の勃発(21.12.24)

帯広の街は、東京ヴェルディをあたたかく迎えてくれた。

帯広の街は、東京ヴェルディをあたたかく迎えてくれた。

第三章 ハラスメント疑惑の勃発

■誰もいなくなったピッチを横切って

北海道・十勝の夏、太陽は西の空に沈みかけている。僕はカメラ機材を片付け、グラウンド脇の石段に腰かけていた。夕暮れの風が心地よく、ぼうっとして仕事でここにきたことを忘れそうになる。

J2は7月17、18日の第23節を終了後、およそ3週間の中断。29日から十勝に飛んだ東京ヴェルディは、帯広の森球技場を拠点とし4日間のミニキャンプを張った。

キャンプ2日目の30日、午前、午後の2部練が終わった。明日は故・藤川孝幸の忘れ形見である北海道十勝スカイアースとのトレーニングマッチだ。

このとき新型コロナウイルスの全国の感染者数は1万人を超え、凄まじい勢いで増加していた。感染予防対策として、チーム関係者と外部との動線を分ける必要があったが、ふだんの練習場と違ってそれが難しい。僕はできるだけ動きが重ならないようにするため、チームが撤収するのを待ち、ホテルまでのタクシーを呼ぶつもりでいた。

誰もいなくなったピッチを横切り、向こうから人が歩いてくる。永井秀樹監督だった。

『デイリー新潮』の記事「名門・東京ヴェルディで相次ぐ選手の体調不良… 背景に永井監督の“吊し上げ”指導」が出たのは昨日のことである。

キャンプ中に予定されていたオンラインの囲み取材は、不特定多数の出入りが避けられないことから中止となっていた。ただ、せっかく遠くまできたのにそれではあまりに気の毒だからという理由で、午前の練習後、キャンプの内容に関してのみ対面で話を聞く時間をもらった。屋外でソーシャルディスタンスを取れば問題なしというメディカルスタッフの判断が後押しになった。

むろん、永井監督にはクラブの広報担当からメディアとの接触を固く禁ずる要請が出ている(といっても、現地にいるのは僕ひとりだが)。混乱をいたずらに大きくしないためには、やむを得ない処置と思われた。にもかかわらず、歩み寄ってきたからには相応の動機がある。

当たり障りのない会話をしばらくしたあと、永井監督がぽつりと言った。

「まあ、向こう(東京)ではパワハラ監督とか言われちゃってさ」

話は本題に入った。

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