「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【この人を見よ!】vol.42 左サイドをぶち抜け ~DF28 山口竜弥~(21.7.23)

今季、ガンバ大阪から完全移籍で加入した山口竜弥の活躍ぶりは目を見張るものがある。シーズン中盤に入ってから定位置をつかみ、その存在感は強まる一方だ。
局面を一変させるパワフルなドリブル突破、タッチラインを上下動できる運動量、得点につなげる左足のクロスはチームの重要な武器。プロ4年目、伸び盛りの季節に、これまで蓄えた力を爆発させようとしている。

■不在によって浮かび上がった重要性

4分のアディショナルタイムは、いまにも尽きようとしていた。

7月3日のJ2第21節の松本山雅FC戦、1点ビハインドの東京ヴェルディが最後の攻撃を仕掛ける。東京Vのコーナーキック、松本が大きく蹴り出し、一転してカウンターを受ける形に。

そこで、猛然と追走する選手が視界に入ってきた。山口竜弥である。相手との距離をぐんぐん詰め、自陣深くまで戻った山口の選択はクリアではなくボール奪取。終了のホイッスルがいつ鳴ってもおかしくない状況で、プレーを途切れさせるわけにはいかない。身体をすべらせながら巧みにボールを巻き込み、味方にパスをつないだ。

が、そこでレフェリーの長い笛。東京Vは1‐2で敗れ、連勝は5で止まった。からっけつになるまで力を出し切った山口は、地面に四つん這いとなり、しばらく立ち上がれなかった。

永井秀樹監督は、山口をカイル・ウォーカー(マンチェスター・シティ)に見立てているのだろうと僕は推測する。K・ウォーカーは今夏に開催されたUEFA EURO 2020で、イングランド準優勝の原動力となり、大会ベストイレブンにも選出された世界屈指の右サイドバックだ。

根拠は、永井監督の敬愛するジョゼップ・グアルディオラの監督術についてインタビューした際のコメントにある。

「それまでペップが仕事をしたスペインやドイツと比べ、イングランドのプレミアリーグは縦に速いのが特徴的。その違いに適応していくため、攻守ともカウンターを常に考えながらやっていると思われます。ビッグクラブの宿命とも言えるハードな日程を考慮し、選手を入れ替えていくなかでも、ウォーカーだけは基本的に外さない。なぜなら、カウンターの場面で抜群に頼りになるから。攻撃はもちろん、守備の対応でも彼は最もスピーディに帰陣でき、スプリント能力が非常に高い。そこがピッチに置かれる一番の理由でしょう」

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