【無料記事】【フットボール・ブレス・ユー】第30回 終わりと始まり ~東京ヴェルディユース 2017 極月~(17.12.16)
藤本がトップに昇格し、そのほかのメンバーは大学へ。99年組がランドを巣立ったあとを受け、チームの中心は森田晃樹の世代が担う。森田は、いかにもヴェルディっぽいと形容されそうなテクニシャンだ。ボールを持ったときの雰囲気があり、駆け引き上手。キープ力、中盤で自在にパスをさばけるのはすでに証明済みである。
ひと足先にトップで主力として活躍する渡辺皓太は、森田の印象を次のように語る。
「足元はめちゃくちゃ巧い。そのうえ、じつはディフェンスも上手。読みを利かせて、こっちの動きを先回りしてくる。自分の苦手なタイプです」
森田は今後のテーマについて「ゴールに絡むプレーを増やしたい。得点、アシストなど、直接的に関与する仕事を」と語っており、課題は明確だ。この才能がさばき屋で終わってしまえば、先はない。
もうひとり、チームを牽引していくだろうと目されるのが山本理仁である。誰が見ても、ひと目でスペシャルだとわかる才気煥発なレフティだ。
「ユースに上がって1年目、代表で離れる以外ほぼ試合に出られたのはよかったです。目標は、トップに上がって、今年J1に上がれるかわからないですけど(※話を聞いたのはJ2最終節の前だった)、もしJ2だったら自分の力で上に上げたい」
山本のプレーについて、大森がこんな話を聞かせてくれた。
「自分が逆サイドにいても、ちゃんと見えている。めっちゃ遠いのに目が合うんですよ。それで、いい動きをすればパスが出てきます。それも、こっちがほしいと思う質のボールが」
山本は、ヴェルディS.S.相模原出身で、小4からジュニアに加入。河野広貴(サガン鳥栖)や南秀仁(モンテディオ山形)の後輩にあたる。読売クラブの「こだわりドリブラー」と呼ばれた土持功の直接指導は受けていないそうだが、いずれ機会を見つけて話を聞きにいってみたい。
武器は左足のキック。同じく左足がセールスポイントの先輩、藤本寛也と比べて、得ている手応えはどうだろう。まだ見劣りするか、それとも。山本はしばらく考え、言った。
「負けたくないですね」
いい答えだ。あっさり白旗を上げるようでは見込みはない。かといって、尊大な態度を取るのも違う。
ジュニアユースで山本を指導したジョゼ・アントニオコーチ(12月9日、退任が発表された)は言った。
「理仁の長所は、学ぶ姿勢があること。吸収力があること。謙虚であること。彼はそれを持ち続けることのできる人間です。足りない部分はありますけど、長所を伸ばしていけば目立たなくできる。バランスを整えることに一生懸命になりすぎるとダメね。平均的な選手にしかならない」
永井監督の見立てはこうだ。
「あいつは(中村)俊輔を超えるよ。言っとくけど、最高到達点がそこではないからね。最低でも、という意味」
来年の新チームの見どころは、これからまだまだ発見されるに違いない。彼らがどんな成長を見せてくれるのか、その日を楽しみに待つとしよう。