【大東京書簡】第二十四信『4月2日は東京ダービー』海江田(25.3.23)
■あなたの関心領域は?
こないだ前から気になっていた映画がAmazonプライムに入っていたから、これ幸いと観た。ジョナサン・グレイザー監督の『関心領域』。ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺や強制労働が行われたホロコーストの現場、アウシュヴィッツ収容所と隣り合わせの邸宅が物語の舞台だ。
収容所所長と贅沢な暮らしを満喫する夫人、家族の日々の営みが描かれる。塀の向こうから銃声や阿鼻叫喚の声が聞こえようが知ったこっちゃない。タイトルの『関心領域』とは、つまりその意味。
定点カメラが人物の日常を淡々と映し、背景には常に不穏な音が薄く流れ、特異な映像体験に引き込まれた。そこにあるものを醜悪だと感じたとして、「で、おまえはどうなんだ?」と問いかけられている気がしてくる。胸の奥にズンと重いものが残る傑作だった。
この仕事をしていて関心を持つ領域が狭まりがちなのは、いまに始まった話ではない。週末のJリーグを中心にスケジュールを組み、勝って小躍りし、負けてしょんぼり。まだまだ新鮮に感じるJ1の戦いが楽しくてしょうがないものだから、なおさらそう。好きなことを書いて生活ができる幸せと、自分が関わっているものを大切にしたい思いとは別に、違ったアングルを持つ必要を感じる。
その点、サッカーは世界とつながっているからだいぶ助かっている。ウクライナの現状やイスラエル問題、埼玉スタジアムで起きた在日クルド人のトラブルなど、手元に引き寄せて考える機会を得られる。
枕のつもりがやや長くなった。
3月20日のルヴァンカップ1stラウンド 1回戦、AC長野パルセイロ戦。東京ヴェルディは延長、PK戦の末に辛くもトーナメントを勝ち上がった。
帰りの新幹線はあちこちに緑者がいて、言っちゃなんだけどルヴァン初戦のアウェーでこんなにサポーターが動くかね、とあらためて目を見張った。城福浩監督が超野心的な目標の一環として、ファイナルの舞台に立つことを意識した発言がいくらか影響しているにせよ、とりあえず日程をこなしてあわよくば程度だった十数年前とはクラブ内外の意気込みが違いすぎる。
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