「ゼルビアTimes」郡司聡

【無料公開】第39回日本クラブユース選手権(U-18)グループステージ第2節・モンテディオ山形ユース戦/我慢の先につかんだ“全国1勝”。グループステージ突破を懸けた運命の第3戦へ

■第39回日本クラブユース選手権(U-18)大会 グループステージAグループ第2節
前橋市下増田多目的運動広場/200人
モンテディオ山形ユース 1-2 FC町田ゼルビアユース(40分ハーフ)
【得点者】山形ユース/70分 高橋潤哉 町田ユース/6分 岸本塁 15分 青木義孝

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[マッチサマリー]
グループステージ初戦をともに落としているチーム同士の対戦は、FC町田ゼルビアユースに軍配が上がった。開始早々の6分に町田ユースの岸本塁が2試合連続ゴールを決めて、町田ユースが先制すると、15分には青木義孝のドリブル突破から追加点を奪取。早々に2点のリードを奪った町田ユースだったが、2点を守り切ろうという意識が強くなったのか、山形ユースの反撃に対して受け身に回ってしまった。2-0で迎えた後半は、何度か町田ユースが3点目を奪うチャンスをフイにすると、終盤の70分に山形ユースが反撃の1点を奪取。後半のアディショナルタイムにはFKから二度肝を冷やす場面を迎えたが、ゴールを許さず、町田ユースが記念すべき“全国1勝”を手にした。

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[コラム]
▼“全国1勝”の先を見据えて

 

時計の針は83分を指していた。

FC町田ゼルビアユースの左サイドで迎えたFKの場面。モンテディオ山形ユースのキッカー・MF加藤康佑がゴール前にボールを入れると、そのこぼれ球が山形ユースのMF加藤稜賀にわたる。土壇場での同点を狙った右足シュートが町田ユースゴールを襲った。しかし、DF西前一輝がゴール前に立ちはだかり、懸命のクリア。それからほどなくして、“歴史は動いた”。

FC町田ゼルビアユース、全国初勝利ーー。薄氷の勝利に歓喜の大爆発とはいかなかったが、選手たちは控え目なハイタッチで勝利の喜びを分かち合った。

全国デビュー戦での逆転負けのダメージは大きかった。「思ったよりも打撃があった」とは竹中穣監督の弁。指揮官は名古屋グランパスU-18戦当日の夜と、山形ユース戦当日の朝に連日のミーティングを開き、チームの回復に力を尽くした。メンタル面のケアを図りながら、実際のピッチ上での修正も施す。かくして「負けたら(突破の)チャンスがなくなる」(DF舟橋碧人)という山形ユースとの“決戦”を迎えた。

試合は最高の滑り出しだった。「チームにとってかけがえのないゴールを決めていたので続けて起用した」(竹中監督)というMF岸本塁が指揮官の抜てきに応える形で6分に先制点を奪い、ドリブル突破などの個人技に定評のあったMF青木義孝が個の力を発揮して追加点を取る。しかし、こうした上々のスタートが微妙にチームの歯車を狂わせていた。

「選手たちの心理なのか、チームとしてやらないといけないことを忘れてゴールを守ることだけになってしまった」と竹中監督。チーム全体の重心が後ろに下がり、ボールを回す上でも、「怖がって爆弾ゲームのように味方に渡してしまった」と、スムーズなポゼッションができないために、ボールを失うことも少なくなかった。たまらず指揮官は2-0とリードしているハーフタイムながらも、強い口調で選手たちをこう諭した。

「点を取ってから焦って前へ前へになっている。このままでは(後半に逆転された)昨日と同じになってしまうぞ」

後半を迎えるにあたって、竹中監督は「各駅停車でもいいからボールをしっかりと転がすこと」を指示。次第にポゼッションで落ち着きを取り戻した町田ユースは、追加点こそ奪えなかったものの、後半に何度もチャンスを作った。「あの状況からゴールが生まれていればまた違ったんだけど……」と竹中監督。指揮官にとっては、物足りない形での勝利となったが、クラブ史上初のユースチーム“全国1勝”という新たな歴史の1ページを刻んだ。

さすがに全国初勝利を支えたサポーターの前では、勝利のラインダンスなど、喜びを隠さなかった町田ユースの選手たち。しかし、試合直後の彼らはすでにその先を見据えていた。

「勝ったことはうれしいけど、(グループステージ突破が)まだ決まったわけではない。今日のことは忘れて次の試合に向けて頑張りたい」(MF青木義孝)

初の全国大会でグループステージ突破を目指すチームにとって、この日の歴史的な1勝も単なる通過点に過ぎない。

Text&Photo by 郡司 聡(Satoshi GUNJI)

[コメント]

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■竹中 穣監督(町田ユース)
「試合には良い状態で入れたと思うが、(ゴールを守ることだけになってしまった理由は)2点を取ってこのまま行きたいという心理が働いたんじゃないか。(ハーフタイムには厳しい口調でお話しされていましたが、どんな指示を?)育成だからやらないといけないこと、この年代で選手として獲得しないといけないことをアプローチはしているつもり。でもそのアプローチとは真逆に進むことは許せない。まずは各駅停車でもいいからボールをしっかりと転がすこと。転がしながらどういう判断をできるか。必ずボールを前に運ぶための転がし方をしようといったことを話した。前の選手が良いタイミングで走っていないのに、ボールを入れ(最前線の)白井(聖也)に走れよみたいなボールを出したりしていたから。(岸本の2試合連続先発出場について)どこまでもつかと思っていたし、佐々木(そら)を後半のスタートで使おうかなというプランもあったが、岸本をいけるところまで使おうと。ゴールシーンは上手でしたね。(引き分けでも突破できますが?)ウチはドロー狙いはできないでしょう。ウチが点を取って我慢する図式が見えている」

 

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■MF 27 岸本 塁(町田ユース)
「(ゴールシーンを振り返って)斜めに良い形でボールが入ってきてターンをしたら良い感じで前が空いていたので、ドリブルして一人を引き付けて、サイドのマサ(金子誠幸)に付けて、中に入ってあとはクロスに合わせるだけだった。練習でも出ない形。奇跡の一発です。(2試合連続ゴール。“持っている男”ということでよろしいですか?)いや、まだ早いです。だから次も決めたい。僕はマンジくん(小池万次郎)の代わりに入った。昨日負けたので今日は勝つしかなかった。できるだけ点を取れるように、裏へ抜けたり、セイヤ(白井聖也)もフォローして、そうしたらゴールを決められた。(決めたときの気持ちは?)2試合来ちゃいました、という感じで。これでも結構ビビっているんです。内心はビビっているんですが、ピッチに立てばやるだけなので。負けたら終わりだったのでここで勝つしかなかった。次も得点に絡めるように、チームが勝てるように頑張っていきたい」

 

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■MF 10 青木 義孝(町田ユース)
「(ゴールシーンを振り返って)自分の特長が前にボールを運ぶことなので、それを意識していて、相手のカバーも甘くて行けると思ったので、行こうと思ってドリブルしていった。押し込まれた終盤はなんとか気持ちで乗り切った感じ。今日の勝利はうれしさというよりも、次につながって良かったという安心感が強い。次に向けてはチャレンジャー精神で頑張ろうという気持ち。楽しみです。また自分がゴールを決めてベスト16に進出できるように頑張りたい」

 

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■DF 15 舟橋 碧人(町田ユース)
「マンジくん(小池)がけがで出られないということで、そのぶんも頑張ろうという気持ちと、今日負けてしまうと突破の可能性がなくなってしまうので、チームに貢献できるように頑張ろうと思っていた。(自分のプレーで心がけたことは?)技術はまだ届かないところがあるので、気持ちでぶつかっていこうと思っていた。同じ1年生の須藤(友介)が何試合もスタメンで出続けているので、ライバルじゃないけど、頑張ろうと思っていた。今日は負けてしまうと(突破の)チャンスがなくなるので、宿舎でも昨日からみんなで気合を入れていこうと話していたので、点を取ってから焦って前へ前へになった。勝てばグループステージ突破なので、チーム全員で勝つ気持ちでやっていきたい」

 

[グループステージ順位表]
順位 勝ち点 得失点差
1位 名古屋 6 +6
2位 町田 3 0
3位 山形 0 -2
4位 横浜FC 3 -4

[今後の試合スケジュール]
■第3節・7月25日(土)vs横浜FC
9:00キックオフ/NTT図南グランド

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