「ゼルビアTimes」郡司聡

【無料公開】第39回日本クラブユース選手権(U-18)横浜FCユース戦/終盤の瓦解、無念の敗退。それでも、冒険は終わらない

■第39回日本クラブユース選手権(U-18)大会 グループステージAグループ第3節
NTT図南グランド/200人
FC町田ゼルビアユース 0-2 横浜FCユース(40分ハーフ)
【得点者】横浜FCユース/75分 中村拓貴 79分 和田涼太

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[マッチサマリー]
1勝1敗でグループステージ最終節を迎えたFC町田ゼルビアユースは、横浜FCユースを相手に0-2で敗れたため、グループステージ敗退が決まった。開始4分のピンチをGK柴崎晃志のファインセーブでしのぐと、次第に町田ユースが主導権を掌握。25分には2試合連続ゴール中のMF岸本塁がポスト直撃のシュートを放ち、43分にはFW白井聖也がゴールをかすめるシュートで相手ゴールに迫った。しかし、引き分けでも突破が決まる町田ユースは、後半の中盤から運動量が低下。70分過ぎからは連続したセットプレーのピンチを迎えて押し込まれると、75分と79分に失点。終盤の瓦解でノックアウトステージ進出を逃した。

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[コラム]
▼最高のゲームの、残酷な結末

 

グループステージ敗退を告げる試合終了のホイッスルが鳴り響くと、“ゼルビア・ブルー”の弟分たちの中にはピッチに崩れ落ちる者もいた。

「顔を上げろ! 立ち上がれ!」

FC町田ゼルビアユースの指揮官・竹中穣監督は、ピッチ内に歩み寄りながら、選手たちへ立ち上がるように促した。

なにも恥じるべき戦いではなかった。

「前半は最高のゲームだった」。グループステージ過去2試合で終始厳しい姿勢を崩さなかった指揮官がそう評するほど、横浜FCユース戦の前半の戦いぶりは特筆すべきモノだった。開始早々に決定機を作られたものの、ボールを保持しながら自らが主導権を握ろうと主体的に45分を戦い抜いた。

敵将・重田征紀監督が試合後、前半の町田ユースの試合内容について、こう触れている。

「9番の選手(FW白井聖也)が前線に残って、あそこに収まるとイヤだなと思っていたところ、実際にボールが収まってしまった。前半からあそこで起点を作られてイヤだなと思っていたし、2列目の選手も結構出てくるのでそれもイヤだった。実際に危ないシーンも作られていた」

25分には右サイドをMF青木義孝が崩し、中の白井を経由して、最後は反対の左サイドから岸本塁が決定的な左足シュートを見舞った。この絶好機はポストを直撃したものの、43分には白井がカウンターの単独突破から相手ゴールをかすめるシュートも放っている。

前半を終えて0-0。今大会初めて、前半にスコアを記録できなかった町田ユースは、「後半にスコアが動くと分かっていた」と白井が振り返ったように、決してこのままでは終わらないであろう勝負の45分に突入した。

しかし、その先に待っていたのは厳しい現実だった。0-0でもグループステージ突破が決まる町田と勝たなければ道が拓けない横浜FCユース。置かれた立場の違いが終盤の馬力の差を生んだのか、70分以降は複数回のCKを含めて、横浜FCユースが町田ユースを押し込む展開が続く。

そして迎えた75分。横浜FCユース・DF渡辺祥の前線へのクリアボールをDF西前一輝が的確にはじき返せずに、そのボールを拾ったFW中村拓貴に背後を突かれると、そのまま先制点を献上。79分にはサイドを崩される形からダメ押しとなる追加点を許し、万事休した。

「セットプレーも含めてその時間帯は押し込んでいたので、その時間帯に点を取れたことは大きかった」と重田監督。相手の背後を突くことに長けた中村の途中起用など、敵将の用兵もハマる形で町田の冒険は、終わった。

選手たちがサポーターたちにあいさつを終えると、中には言葉にならない声を発する選手もいた。

例えば、1失点目のきっかけとなるミスをした西前は、「オレが…、オレが…」と声を荒げて泣き崩れ、自身のミスを悔いていた。しかし、山形ユース戦における終了間際の彼のクリアがなければ、チームが全国1勝を手にすることもなかった。一つのミスが命取りになることは、サッカーが持つ残酷な一側面ではある。それでも、そのワンプレーだけで「集中力高く戦えていた」(竹中監督)西前のクラブユースにおけるパフォーマンスが全否定されるわけではない。ましてや、彼らにはこのミスを取り返すチャンスが、まだ残されている。

 

▼そして、未来へ

 

町田ユースが未開の地、全国大会初出場の切符を獲得し、大会2試合目には初勝利をもぎ取る。そしてグループステージ最終節も「勝負というか大事なものを懸けて試合ができる」(竹中監督)段階にまでたどり着けたことは、それだけでも誇らしい成績だろう。

クラブに長らく籍を置き、今回は育成年代の監督として、クラブの一歴史を築いた竹中監督は、町田ユースの近未来について、次のように話している。

「非常に難しくなると思う。全国大会に出させてもらって、町田ユースと聞けば、(ほかのチームが見る目も)勝手に立ち位置が上になる。今年、ここからの来年の1年間という時間は難しくなる。そうは言っても立ち位置が上がったわけではないので、地に足を着けてクラブとしては半歩ずつでも進んでいきたいと思う」

全国での経験を携えたゼルビア・ブルーの弟分には、東京都4部(T4)リーグという日常と、10月開幕のJユースカップという冬の目標が控えている。運命の横浜FC戦で何度かチャンスをつかみながらも、ゴールネットを揺らすことができなかった白井は言う。

「あと少しのところでベスト16という結果を取れなかった。少しの部分を突き詰めていかないと、こういう瀬戸際の戦いでは苦しい思いをするということを経験したので、高校生としての集大成の大会でもあるJユースでは、少しでも勝ち上がって監督を胴上げしたい」

町田ユースの挑戦は、まだ終わらない。

Photo&Text by 郡司 聡(Satoshi GUNJI)

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■竹中 穣監督(町田ユース)
「前半は最高のゲームだったと思う。ハーフタイムにもそう伝えた。相手のあとから出てきた選手たちが脅威だった。この試合での選手たちは褒める褒めないではなく、こういう環境の中で特に前半は頼もしく見えた。前半は主導権を握ろうとしていたし、その中で主導権を握った時間帯も作れた。(この3試合で選手たちの成長が見えた部分は?)相手チームも苦労している環境下でウチの選手が上回る時間帯が3試合目にして多く作れたので、それは非常に良いことだけど、ワンプレーの質や考えること、相手を見ることのレベルが上がってこないと、冬は勝てない。そういう作業をこの8月と9月にアプローチしていかないといけない。(ドリブル突破をしかけて相手に引っかかる場面もあったが、それは積極的なチャレンジとしても捉えられると思います)ボールのラインをなかなか追い越せる選手がいないので、しかけることで一つ相手をはがせればこちらにパワーバランスが来るし、実際に来ていた。中だけでなく縦にもしかけていこうということだった」

 

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■FW 9 白井 聖也(町田ユース)
「あと少しのところで前が点を取れずに、こうなること(点を取られること)は少し予測できていたので、もっと早いタイミングで点を取っておきたかった。でもあと一歩足りなかった」

 

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■DF 2 小池 万次郎(町田ユース)
「(けがで)2試合出られなかったぶんも、もっとみんなのカバーリングをしないといけないと思って試合には臨んだ。(先制点につながった場面について)正直ボールが入ったときには(裏へ)抜けるかもしれないと思ったけど、もう一歩早く出られなかった。2失点目も相手のマイナスのパスにもう一歩足を出せれば良かった。結果論になるけど、自分の力が足りなかった。(2試合は外からチームを見ることになりましたが?)タケさん(竹中監督)も言っていたけど、今日の前半20分は入りが良くて、初戦の名古屋戦も試合の入りが良くていけるんじゃないかと思った。山形戦は2点を先に取って良い入りをしたけど、最後まで運動量がもたなかったり、最後コーチングの声が出なくなったりしていた。二次リーグのころと比べて最後まで走り切れなかったかなと。(今後に向けて)正直言うと敗退は早かったなと。ただそれは仕方がない。個人としては1試合でも全国大会を経験させてもらった。まだ引退ではないし、T4リーグやJユースも残っている。クラブに結果という形で残したいし、この悔しさを明日の練習からみんなで共有して、チームとしても個人としても上を目指していきたい」

 

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■DF 20 須藤 友介(町田ユース)
「縦に突破もできなくてクロスもなかなか上げられなかった。そういうところをやっていかないといけない。点を取れれば良かったけど、立ち上がりは悪くなかったので全力は尽くしたんじゃないか。左サイドからは崩せているけど、右サイドは僕がつなげなくて、おとといの試合でも僕がボールを取られて失点をしている。自分のプレーを改善することもそうだし、周りとの連係をさらに高めていきたい。僕はほかのチーム(FCトッカーノ)から入ってきて最初は不安なことがあったけど、先輩たちがいろいろと教えてくれて最初はダメでもみんなで励ましてくれてうまくチームになじめるようになった」

 

■重田 征紀監督(横浜FCユース)
「まずはグループステージを突破できて良かったと思う。(後半に向けてハーフタイムでは)もう少しゲームプランとしては中央を使いたかったが、それがカウンターの引き金になっていたので、サイドから(攻めて)行こうという指示を出した。ゲームプランでは中盤を構成したかったけど、コンディションがそういう状況ではなかったので、交代で投入した選手は裏を突いていくことが得意だったから、正直力で押し切ろうとした。(先制点は)ラッキーな形で相手の処理のミスを突けた形になった。裏へ抜けることが得意という特長が効いたんだと思う」

 

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[グループステージ最終順位]
順位 勝ち点 得失点差
1位 名古屋 9 +15
2位 横浜FC 6 -3
3位 町田 3 -1
4位 山形 0 -11

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