「ゼルビアTimes」郡司聡

【無料公開】第39回日本クラブユース選手権(U-18)/全国大会デビューという新たな歴史を刻んだFC町田ゼルビアユース。勇戦の逆転負け、第2戦の巻き返しへ

■第39回日本クラブユース選手権(U-18)大会 グループステージAグループ第1節
前橋総合運動公園陸上競技・サッカー場/100人
名古屋グランパスU-18 2-1 FC町田ゼルビアユース(40分ハーフ)
【得点者】名古屋U-18/55分 北野晴矢 59分 吹ケ徳喜 町田ユース/20分 岸本塁

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[マッチサマリー]
試合開始早々のピンチをGK柴崎晃志のファインセーブでしのぐと、20分には相手のミスを突いたカウンターから最後はMF岸本塁が“町田ユース全国第一号ゴール”を決めて先制した。しかし、後半はサイド攻撃を軸に反撃を開始した名古屋に押し込まれる展開が続く。迎えた55分には途中出場のMF田中彰馬に左サイドを破られた上に、最後はFW北野晴矢に押し込まれて同点に追い付かれると、失点から4分後の59分にCKからニアサイドでドンピシャのヘッドをMF吹ケ徳喜に決められて逆転を許してしまった。反撃に出た町田ユースはFW白井聖也がミドルシュートやポストのはね返りを押し込もうとするも、1点が遠く万事休す。町田ユースの記念すべき全国デビューは、悔しい逆転負けだった。

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[コラム]
▼チームを襲った緊急事態

 

「チャレンジャー」(竹中穣監督)として挑んだFC町田ゼルビアユースの歴史的な全国デビュー戦は、苦い逆転負けに終わった。名古屋グランパスU-18のパスミスを突く形から鮮やかなカウンターで先制パンチを浴びせ、何度となく名古屋U-18の選手たちにサイドを破られながらも、「勝ち点3を持ち帰る」(DF西前一輝)ために、体を張った守備で相手の攻撃をはね返してきた。

しかし、酷暑下の気象条件とこれでもかと相手陣地でドリブル突破を繰り返してきた名古屋U-18によるボディーブローが町田ユースの身体を蝕み、ついには55分に守備が決壊。失点直後の59分には「直前の公式戦でもそういうことがあった」(西前)という連続失点でチームは一敗地にまみれた。

試合前日、チームには緊急事態が訪れていた。エースの1トップ・白井聖也が前日練習中にほかの選手と衝突し、左の目の上を5針縫うけがを負った。また前日練習後に小池万次郎が負傷を訴え、名古屋U-18戦の出場を回避。本来は中盤の選手である高橋渉がCBに入るスクランブル布陣だった。

それでも、クラブ史上初の全国大会出場の切符をもぎ取っていたチームは、強固な意志で強豪・名古屋ユースに立ち向かった。小池の代わりに出場する格好となったMF岸本塁がカウンターから先制点を奪取。MF佐々木そらからのスルーパスを丁寧にGK加藤大智の動きを見ながら冷静に流し込んだ形だったが、本人いわく「正直、焦っていた(苦笑)」。竹中監督の「そこそこできることは分かっていた」という期待に応える活躍ぶりだった。

CBで出場した高橋は「急きょCBで出る形になったけど、こういうハプニングは大会には付きもの。自分のできることを精いっぱいやるしかないという気持ちで臨んだ」と振り返る。緊急事態にも動じず、代わりに出た選手が結果を残すなど、それはチーム力を有している証左でもある。敵将・高田哲也監督は、「町田は[4-1-4-1]でブロックを作ってカウンターをしかけてくるチーム。手を焼くだろうなと思っていたし、前半は相手の思うツボだった」と話し、町田ユースの奮闘に苦しんだ心境を吐露している。結果こそ、悔しい逆転負けだが、町田ユースが全国までたどり着くにふさわしいチームであることを証明できた80分だった。

「明日は本当に良いゲームをしないといけないよという意味での忘れていいよということだけど、体のケアから食事まで明日の試合のために時間を使うこと。もう今日のことは考えるなと選手たちに伝えた」(竹中監督)

連戦で迎えるグループステージ第2節は、同じく初戦を落としたモンテディオ山形ユースとの対戦となる。全国デビューを勇戦で終えた町田ユースは、“全国1勝”という新たな歴史の1ページを刻むための戦いに再び挑む。

Text by 郡司 聡(Satoshi GUNJI)

 

[コメント]

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■竹中 穣監督(町田ユース)
「今日の結果は最低限のスコアだと思うので切り替えていきたい。(前半の中盤ぐらいからボランチにプレッシャーに行けずに苦しい展開でした)しゃーないかと思っていた。予想外にボールのところに行けなかったし、高橋(渉)を急造でCBに起用したが、ラインが下がってしまうのは仕方がなかった。(選手たちにはどんな言葉をかけて送り出しましたか?)チャレンジャーとして失うモノはないと。ここに来られたことが素晴らしいし、いろいろなものをもらったり、応援をしてもらったり、ギブ・アンド・テイクという意味でわれわれが返せるもの、ギブできるもの、それは一生懸命にやることなんじゃないかと送り出した。(1-0でリードして後半に入る際の指示は?)ゴール前をフタするような形になっても仕方がないと。一つボールにプレッシャーをかけに出たいけど、それもどれだけできるか、そして後ろで耐えられるか、はね返してどれだけゴール前に迫れるかという話をしたけど、そう甘くはなかった。(監督の中では、相手に押し切られたゲームなのか、チーム力の差で敗れたのか、どのように解釈しているでしょうか?)僕個人の見立てだとスキルのなさが招いた結果ではないかと。背後に落とそうという中でそういうボールが蹴れないといった、スキルの差が出た。これは明日明後日で改善できるわけではないけど、(チームと個人が)成長する上ではまだまだだなと」

 

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■MF 27 岸本 塁(町田ユース)
「(ゴールシーンを振り返って)良い感じに(佐々木)そらが引っ掛けて自分が(スペースに)走って行ったら良いパスが来た。あとは決めるだけだった。(GKの動きも冷静に見ていたのでは?)いや、焦っていました。気持ちは焦っていたんです(苦笑)。(小池選手の代わりに出場したような形になりましたが?)やらないといけないという気持ちで臨んだ。チームを代表して出場するので、ハンパなプレーはできないと思っていた。今日の出来は100点満点では70点ぐらいかな。歴史に残るゴールを決められてうれしいっす!」

 

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■FW 9 白井 聖也(町田ユース)
「初めて全国大会に出るということでみんなはなかなか自信もつかめない中で、精いっぱいの努力や練習で自信を付けて試合に臨んだ。試合の入りも良かったけど、途中から足が止まって集中力も続かなくなって、負けてしまったことは残念。後半の給水タイムが終わったあとぐらいから一気に足が動かなくなった。チームとしては得点シーンがそうだったように、ショートカウンターから早いタイミングでパスを入れる形は通用したと思う。(ミドルシュートとポストのはね返りを押し込もうとした場面もありました)自分の体力の限界が近い中で最後の力を振り絞ったけどあと一歩足りなかった。次に向けて疲労があるので、少しでも疲労を取って、最善の状態で試合に臨んで、みんなで気持ちを一つにして勝ち点3を取りたい」

 

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■DF 5 西前 一輝(町田ユース)
「たくさんの方にスタンドで応援してもらったので、勝ち点3を持って帰りたかったけど、後半は運動量が落ちて逆転されてしまった。それが残念。(サイドからえぐられる場面が多かったです)自分の隣の右SBの須藤(友介)が1年生なので、自分がなんとかカバーしてあげたかった。失点したシーンも中で決められたり、セットプレーから決められてしまったので明日は修正していかないといけない。(取られたあとにすぐ取られたのがもったいなかったのでは?)直前の公式戦でもそういうことがあったので、自分たちの悪い流れが続いている。明日の試合までに短い時間しかないけど修正していきたい。(個人のプレーという意味で通用した部分は?)自分はヘディングやロングボールが持ち味だけど、ヘディングは通用したと思う。ただキツくなったときに長いボールが蹴れなくてその精度が足りなかった。今日の試合のことは忘れるわけではないけど、良い意味で自分で消化して、今日のスタートのときのようなコンディションで試合に臨めるように準備したい」

 

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■DF 6 高橋 渉(町田ユース)
「普段やり慣れていない大会だったので正直怖さはあったけど、思い切って自分たちのサッカーをやれば勝てると思ったので、そこは自信を持って臨んでいた。(攻め込まれていた時間帯について)全体的に間延びもしていたし、最後のところをゴール前で弾こうとCB二人で話していた。失点したあとにもう一度気持ちを入れ直してやらないといけなかった。悔いが残っている。個人としてはもう少しつなぎたかった。そんなにやれないということでもなかったし、勇気が大事で勇気を持って回していきたい。この結果を悔やんでいても仕方がない。切り替えてここから良い準備をしたい」

 

[グループステージ順位表]
順位 勝ち点 得失点差
1位 横浜FC 3 +1
1位 名古屋 3 +1
3位 山形 0 -1
3位 町田 0 -1

[今後の試合スケジュール]
■第2節・7月23日(木)vsモンテディオ山形
11:30キックオフ/前橋市下増田多目的運動広場

■第3節・7月25日(土)vs横浜FC
9:00キックオフ/NTT図南グランド

 

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