「ゼルビアTimes」郡司聡

【★無料公開】【コラム】第41回日本クラブユース選手権(U-18)グループステージ・松本山雅FCU-18戦/あの日があったから、いまがある

■第41回 日本クラブユース選手権(U-18)大会
グループステージ Gグループ第3戦 14:05キックオフ
前橋総合運動公園陸上競技・サッカー場/200人
松本山雅FC 3-0 FC町田ゼルビアユース (40分ハーフ)
【得点者】町田/12分 鈴木舜平、34分 馬場渓(PK)、57分 鈴木直人

▼悔恨の記憶の書き換え

3-0で迎えた後半のアディショナルタイム表示は3分。他会場ではグループステージ突破を争う京都サンガF.C.U-18が0-2とリードを許していた。指揮官・竹中穰監督は、そこで初めて選手たちに京都U-18の情報を伝えた。3分のアディショナルタイムが経過し、主審の試合終了のホイッスルが鳴り響くと、FC町田ゼルビアユースの選手たちは控えめに喜びを表現した。2年前、クラブ史上初の全国大会出場となった日本クラブユース選手権(U-18)では1勝2敗でグループステージ敗退を喫していたクラブが、新たな歴史を切り開いた瞬間だった。

「2年前は先輩たちに連れてきてもらいましたが、今回は僕たちの代が引っ張ってきました。先輩たちを超えるチャンスがあります」

2年前の悔しさを知る須藤友介は、“先輩越え”を目指してこの日のピッチに立った。

「2年前の悔しさを晴らせて良かったです」

2年前のグループステージ最終戦・横浜FC戦で最終ラインの選手として出場していた舟橋碧人もリベンジを果たした。

振り返れば、2年前は、指揮官・竹中穰監督にとっても、初めてとなる全国の舞台だった。

「群馬の暑さへの対処など、コーチングスタッフとしての経験値のなさが否めなかった大会でした。ただ2年前の大会を経て、多くの引き出しを持ってこの大会に臨めたことは良かったと思っています。3年生の中には前回大会を経験している選手もいます。彼らがいたことで前向きな結果が必然的に導き出されたのかなと思っています」

例えば2年前、1年生だった須藤は最上級生になった。FW鈴木直人ともに副将に指名された背番号5は、前回大会の経験値を生かすかのような振る舞いが目立っていたと主将の谷口幸太は言う。

「特に須藤はこの大会でどういう調整をして、どういう試合運びをすれば良いのか。一度出ているだけに理解している部分があります。下級生で初めての全国大会出場ともなれば緊張感が全然違うでしょう。彼らがリラックスして試合に臨めるように、須藤らが食堂でフレンドリーな環境を作ってくれていることを僕は見てきました。そのことにすごく感謝しています」

全国を知るだけにその経験を生かそうとした須藤だが、実はグループステージの期間中、なかなかコンディションが上がってこなかったことを竹中監督は明かした。それでも、全国を知る先輩として、そんな素ぶりを見せるわけにはいかなかった。

「どれほどアイツの背中を見ている後輩がいるのか分かりませんが、ずっと3年間試合に出続けている中で、努力をし続けている姿を下級生の選手たちは見てきたはずです。本来であればもっと輝いてほしい選手ですが、コンディションのことを受け止めながら必死に戦ってくれました。これも彼の成長につながるんじゃないでしょうか」(竹中監督)

2年前の全国初舞台で対峙した名古屋グランパスU18に「翻弄された」と当時を振り返る須藤。しかし、2年の時を経て、この日グループステージ突破を決めたことにより、名古屋U18戦とこの日の松本山雅U-18戦を戦ったピッチ(前橋総合運動公園陸上競技・サッカー場)は、悔恨の舞台から歓喜のステージへと記憶が書き換えられた。

「名古屋と対戦したこのピッチでグループステージ突破を決められたことがうれしいです」

そう言って須藤は笑顔を見せた。

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