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「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

下のカテゴリーのチーム、ならばパーフェクトを求めたい [天皇杯2回戦ヴァンラーレ八戸FC戦レビュー] (藤井雅彦) -1,868文字-

対戦相手のヴァンラーレ八戸FCは「アグレッシブに真面目に戦うチームだった」(六反勇治)。スタート時こそ[4-3-3]に近い陣形だったが、守備時には11人全員で引いてブロックを作り、一生懸命に守った。大学を卒業したての選手を多く含むチームがそのような守備を採用した場合、プロでも崩すのは容易なことではない。1トップの藤田祥史のシュートチャンスは限られ、2列目の選手も相手守備のブロック間でボールを受けるのが難しかった。左MF比嘉祐介が何度かバイタルエリアでボールをもらう動きをしたまでは良かったが、あとが続かない。

それでも後半に入ると八戸守備陣にも隙が生まれ始めた。ハーフタイムを経てピッチに投入された齋藤学によるところも大きかった。齋藤は「前半から相手は粘り強く守っていたので、自分のところで相手をバテさせるようなプレーができればと思って試合に入った。最初の2~3回はわざと強引に仕掛けた」とゲームプランを明かす。積極的な仕掛けに相手は腰が引け、ピッチにあちらこちらにスペースが生まれた。『日本代表』という肩書きはアマチュア相手だと、より効力を発揮するのかもしれない。

そのスペースを有効活用したのがレギュラーながら先発した兵藤慎剛だった。普段のリーグ戦では黒子に徹し、地味な役回りに終始している。がしかし、この日は違った。高校、あるいは大学時代を彷彿とさせる主役プレーが蘇る。ボールを受けるとすかさずターンして前を向き、能動的に仕掛ける。プレーも多彩でドリブルあり、パスあり、そして同点ゴールに象徴されるようなシュートあり。リーグ戦で中村俊輔が担う役割までこなし、存在感を見せつけた。

齋藤と兵藤の活躍は今後のリーグ戦に向けて喜ばしい要素だが、そのほかの選手のアピールに物足りなかったとも言える。藤田は少ないシュートチャンスをきっちりモノにして、PKによる2ゴールを含めてハットトリックを達成した。ただし相手との力関係を考えるとどこまで評価すべきか。そもそもシュートチャンスの少なさが最大の課題であり、もっとボールを呼び込むような働きかけが必要だった。少なくともアマチュアレベルの間を圧倒したわけではない。

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佐藤優平や熊谷アンドリュー、あるいは比嘉などは要所で光るプレーを見せた。特に佐藤はナビスコカップ準決勝1st・柏レイソル戦に引き続き2列目で意欲的なプレーだった。齋藤が出場してからは息の合ったコンビネーションもあった。だが、どうしてもイージーミスが多い。これは熊谷や比嘉にも共通することで、良いプレーをした次のアクションでミスがあるため、どうしても印象が悪くなる。兵藤のように安定したパフォーマンスではなく、そこには明らかな差がる。

4-3-3八戸その差が、スタメンと控えの明確な線引きなのではないか。線がぼやけるような起用法、あるいは練習を含めたマネジメントを指揮官に求める声もあり、それをすべきだった局面も過去になかったとは思わない。実際、大量リードした試合はリーグ戦序盤にあり、もっと早い選手交代があっても良かった。それにもう少しメンバーをシャッフルできたカップ戦も何試合かあっただろう。だが、樋口靖洋監督は極力それをしなかった。そのツケとも言えるだろうが、筆者はプレーヤーに理由があると考えている。

これまでも何度も述べているように、サッカーは相手があって成立するスポーツだ。その点で、この日の相手はJ1でもJ2でもJFLでもなく、さらに下のカテゴリーのチームだった。ならばパーフェクトを求めたい。つまらないミスでボールロストするのではなく、精度の高いプレーを連続し、違いを見せてほしかった。しかし、残念ながらそれができた選手はレギュラー格だけである。

リーグ終盤戦に向けてレギュラー争いに食い込んでくる余地のある選手は、おそらく八戸戦からは少ない。突きつけられたのは厳しい現実だった。

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