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【VSアルビレックス新潟】バングーナガンデ佳史扶は五輪出場決定の吉報を喜ぶも目の前に全集中 「僕は自分がコントロールできるところで100%を出したい」

 

27J110節 アルビレックス新潟 1-3 FC東京(デンカビッグスワンスタジアム)

 

 パリへの道はつながった──。

 

 U-23日本代表がパリ五輪アジア最終予選を兼ねたU-23アジア杯で決勝進出を果たし、本大会出場を決めた。バングーナガンデ佳史扶はそのメンバーから外れても、「変わらず僕は続けるだけ」と自らと今に向き合っている。

 

 準決勝のイラク戦の試合時間は430日未明だったため、「まだ試合は見られていないけど、タロウ(荒木遼太郎)が決めたこともうれしい」と吉報を喜んだ。ただし、自身は「僕は東京で結果を出していきたい。パリ五輪に出られるように自分がコントロールできるところで、100%を出してあとは評価してもらえたらと思います」と言葉にする。気持ちは最終予選のメンバー発表からすぐに切り替わっていた。目の前のこと、試合に「全集中している」という。

 

「とにかく今はチームが良い流れに乗れるかが次の試合で関わってくる。5月は8試合を戦うので、過密スケジュールにもなる。まずは、そこに向け全集中でやっていきたい」

 

 ここからタフな戦いが始まる。代表活動で荒木遼太郎、野沢大志ブランドン、松木玖生を欠くなかで、けが人も増えているだけに総力戦となる。

 

「今までもそうだったけど、本当に総力戦だと思っている。途中出場で出る選手や、誰かがけがをしたときに後から出る選手も高いクオリティーを出せている。練習の中でも誰が出てもおかしくない空気がつくれているし、全員が一人ひとり危機感を持って練習できている。それが、今このチームで誰が出てもいいパフォーマンスが出せることにつながってきていると思う。連戦で疲労もある中ですけど、練習のところのクオリティーを落とさず一つ一つ、毎日一日一日個人としてもチームとしても積み重ねていくことが5月の連戦を乗り切るために必要なことだと思う」

 

 また、新潟戦では白井康介が1得点1アシストを挙げ、主役の座についた。そうしたことも大きな刺激になっているという。

 

「佑都さんが点をとったときもそうですし、康介君が得点を取ったこともめちゃくちゃ刺激になっている。今、サイドバックが得点にどんどん絡めていて、それがチームの勝利に直結できていることはうれしい。同じサイドバックとしていい刺激になっているから。同じサイドではなく、右サイドで結果を出したとしてもうれしいなと思う一方で、オレもやってやりたいと思う気持ちが芽生えている。そうしたことが、サイドバック全員に共通して生まれてきていることだと思うし、すごくいいサイクルになってきていると思う」

 

 切磋琢磨し合う仲間の存在が、佳史扶を次なるステージへと導くはずだ。

 

「攻撃ではより数字を求めている。守備ではまだ軽いプレーが要所、要所で出てしまっているので、そこは潰していきたい。攻撃のところでどれだけ数字を残せるかが今季一番こだわっているところなのでそこはやっていきたい」

 

 インターセプトでボールを奪った勢いのまま一気にゴールを攻め落とすカタチと、スローダウンしてボールをつなぎながらゴールに迫るカタチの両方が板についてきた。それがリーグ最多得点にもつながっている。その中心的な役割を両サイドバックが担い始めた。佳史扶も「今季自分たちも感じているところだと思う」と手応えを口にし、こう続けた。

 

「ミーティングでも映像を細かくつくってくれて、それを分析していることが試合に出ている。そこは本当にコーチ陣に感謝している。チームとして一体感が生まれて狙いも定まっているので、行くべきところで思い切り奪いきれるところは去年と比べて成長しているところだと思う。チームとしてキャンプからやってきたことが間違いじゃなかったと、みんながああいうプレーを出せる理由だと思う。手応えがすごくあるので、どんなサッカー相手にもそうしたことを出せるようになれば優勝争いや突き抜けたチームになれると思うのでやっていきたい」

 

 謙虚な向上心を燃やしながらパリ五輪を目指す。カタールの地にいなくとも、やるべきことは変わらない。ここにも憧憬の舞台を目指す男がいる。バングーナガンデ佳史扶はこだわりを見せているチームの勝利とそれに直結する個人の活躍を追い、自らの手でパリへの道をつなげていく。そこにはたくましさを増した、男の顔があった。

 

 

text by Kohei Baba

photo by Masahito Sasaki

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