追悼チバユウスケ「味スタで聴きたかったあのがなり声」【無料公開】
線香の代わりに、ラッキーストライクに火をつけた。ヤニ黒焦げた夜の左手で、描き始めなければいけない。
12月5日、二日酔いの気だるい昼に訃報を知った。公式サイトおよびインスタグラムで「チバユウスケに関しての大切なご報告」というタイトルで、こう記されていたのだ。
『かねてより回復に向けて懸命の治療を続けてまいりましたが、思い叶わず2023年11月26日に家族に見守られ穏やかに息を引き取りました。
静かに見送りたいとのご意向により、親族とメンバーで葬儀を執り行いました。
春先の療養のご報告から約半年、たくさんの心強く温かい励ましのお言葉をいただき、静かに見守っていただいたことに感謝いたします。
お別れの会を設けさせていただきたく、準備を進めてまいります。こちらに関しましてはあらためてご案内させていただきます。
チバユウスケへの数々の大いなる御支援に深く感謝申し上げます。
株式会社ベイス
ユニバーサルミュージック合同会社
The Birthday クハラカズユキ,フジイケンジ,ヒライハルキ』
『THEE MICHELLE GUN ELEPHANT』のボーカルとして1991年から活動を開始し、2003年の解散後は『The Birthday』などでも活躍した。05年には『THE MIDWEST VIKINGS』のボーカルとして3曲入りのクラブ非公式応援歌『VAMOS TOKYO!』をリリース。いつしかその歌が味スタの歌唄いたちの間でも歌われるようになっていった。
チバユウスケは今年4月に食道がんの治療に専念するため休養を発表すると、味スタには東京サポーターがリクエストした『VAMOS TOKYO!』が響き渡った。それに合わせて大合唱が起こり、青赤フラッグが風にたなびいた。ゴール裏には「勝ちに行け チバユウスケ」「VAMOS チバユウスケ」の横断幕も掲げられた。
さらに、10月1日のクラブの設立25周年記念日に開催されたガンバ大阪戦の試合前には東京スカパラダイスオーケストラがスペシャルライブを味スタで熱演。その最後に、川上つよしが叫び、曲が披露された。
「最後にトーキョーがいつかリーグ優勝できるようにという思いを込めて、The Birthdayのチバユウスケと一緒につくったこの曲を聴いてくれ、一緒に歌ってくれ。Dale Dale」
パンは焼かないけど、待ち焦がれていた。味スタで、あのがなり声が聴ける日が来ることを──。
思いは叶わなかった。できることなら、今後も味スタで歌い継がれていってほしい。ヒーローが残した、ヤニでつぶれた喉の奥から吐き出されたあの歌を──。
最高にかっこいい、あの声をもう一度聴きたかった。青赤とフットボールを愛した、愛すべきロッカーのご冥福を心よりお祈りします。
text by Kohei Baba
illustration by Masahito Sasaki