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I’m looking forward to trying again! 田川亨介が覚悟の欧州再挑戦で伝えたい思い「100%あきらめることができなかった。それがオレの本音です」【無料公開】

 

 FC東京は28日、FW田川亨介がスコットランド1部のハーツに完全移籍すると発表した。今夏に期限付き移籍していたポルトガル1部のサンタクララから復帰していたが、再び欧州へと旅立つ決意を固めた。

 

 1年半を過ごしたポルトガルでは39試合出場7得点を挙げていたが、クラブの経営権が新たに変更された昨季は選手が大幅に入れ替わり、シーズン中に2度の監督交代も経験。チームは最下位に沈み、2部に降格していた。

 

「自分と向き合う時間は多かったので、そういう意味でも成長できた。最初はメンバーも良かったけど、選手の入れ替わりも激しかった。うまくまとまらなくて全く勝てなくなった、それも含めていい経験だった。周りに流されそうになるところで、これじゃダメだと振り絞ってきた。選手としていろんなものを吸収できた1年半だった」

 

 ただ、やりきったという思いはなかった。消化不良のまま日本へと帰国したが、欧州でプレーを続ける夢は捨てきれず。今夏の移籍に向けて複数のクラブと交渉を続けてきた。夢が閉ざされた場合は、所属元の東京でプレーしたいと思っていたのも本音だ。ただ、そこにスコットランドから正式なオファーが舞い込んだ。

 

 

「海外でプレーすることはあきらめきれなかった。もちろんチャンスがあれば行きたいという気持ちはあった。それが閉ざされたときに、東京でまた一からやろうと思っていたし、帰ってきて東京のためにという気持ちを持ちながらこの間を過ごしていた。ただ、今回に関しては、そのチャンスが舞い込んだからチャレンジを決断しました」

 

 欧州挑戦は、サッカー選手として描いた夢だった。そこに一歩足を踏み入れると、自分が予想もしなかったことが起きる世界だった。想像すらできないことが身に降りかかる。「サンタクララの最後は監督不在でコーチが監督の代わりでやっていた。日本じゃありえないじゃないですか? 環境は最悪ですよ、自分たちの練習グラウンドもなくて日替わりで移動する。そんな経験もできた。事件? ありすぎてやばいぐらいだった(苦笑)」。でも、そんなことさえも「おもろいし、普通じゃないから楽しい」と思えた。そんな世界に、もう一度戻れるのなら……それが正直な思いだった。

 

「プロになってからずっと目標だった、海外で長くプレーしたいと思ってきた。チャンスがあったら飛びつかないわけにはいかない。サンタクララではヨーロッパの難しさも感じることができた。自分と向き合う時間も長かったけど、それも面白さの一つだと思った。そこにいたからこそ、もっとやりたい、経験したいという気持ちが強くなった。100%あきらめることはできなかったというのが、オレの本音です。その思いしかないし、言えることはそれしかない。それが全てだと思う」

 

 そんな自分の背中を押してくれる人たちがいるのならと、こう言葉にする――。

 

「オレが向こうでプレーして活躍することでしか、サポーターや、応援してくれる人には見せられない。覚悟は決まった、今回は期限付き移籍の時とは違う意味を持つ移籍だと思っている。どこまで自分が行けるかを試したいし、見せたい。いや、見せなきゃいけない、その責任が生まれたと思っている。その思いが伝わればうれしい」

 

 かなえたい夢、試したい手応えや、つかんだことがある。日本代表入り、欧州のカップ戦……。

 

「夢も、チャンスもたくさんある。また自分と向き合う時間も増えると思うし、きっと人としての考え方も広がる。でも、一番は元気にプレーする姿を見せ続けたい。それかな」

 

 恐れることは何もない。田川が覚悟を持って再び海を渡る。もっと尖れ、亨介!

 

 

text by Kohei Baba

photo by Masahito Sasaki

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