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25年加入内定の安斎颯馬が特別指定選手に 再び松木との熱い競演も予感させる「この決断は一日でも早く試合に絡むため」

 

 あの時の10番が帰ってきた――。

 

 FC東京は13日、25年シーズンの加入が内定している早稲田大のMF安斎颯馬(3年)が日本サッカー協会から特別指定選手に承認されたと発表した。背番号は38で、大学に所属しながらJリーグの試合にも出場が可能となった。

 

 

 FC東京U-15深川時代は10番を着けて高円宮杯U-15決勝にも出場し、惜しくも鳥栖U-15にPK戦の末に敗れて全国制覇を逃した。ユースへの昇格を逃し、「悔しさを持って進学した」という青森山田高では1学年下の松木玖生とも共闘した。3年時には高校選手権で大会得点王に輝くも、決勝では中学時代に苦楽を共にした熊倉匠(立正大3年)や笹沼航紀(桐蔭横浜大3年)が所属する山梨学院相手にPK戦で涙をのんだ。

 

 

 そして、今季開幕前の沖縄・国頭キャンプにも帯同し、シュートセンスや強度の高いプレーを見せていた。その練習試合では、見慣れないポジションでピッチに立っていた。それが自らの希望だと聞いて、さらに驚いた。

 

「元々、深川時代にサイドバックもやっていた。早稲田の関東リーグでもサイドバックでスタメンでフル出場したこともあった。自分の中で、サイドバックはオプションの一つだと思っている」

 

 それだけ、自分の見せ方を知っている選手だということだろう。ウイングやインサイドハーフはもちろん、サイドバックでもプレー可能ならばクラブも獲得に乗り出しやすい。マルチロールぶりをアピールできれば、試合出場の道も広がると考えての志願の出場だったのかもしれない。

 

 

 最終的には複数のクラブが競合していたが、大学3年の4月というタイミングでの加入内定が決まった。それも、いち早くJのピッチに立つためだった。学業との両立を優先し、大学にも通いやすい利点も考慮して決断に至った。

 

「早く決めたからにはこっちの試合にも食い込みたいと本気で思っている。それが早く決めた理由の一つにもなっている。どんどんアピールして一日でも早く試合に絡んでいきたい」

 

 この安斎の加入で、選手層の厚みが一気に増す可能性も秘めている。けが人が続々と帰ってきているが、安斎の汎用性の高さは既にキャンプでも立証済みだ。巡ってきたチャンスを逃さなければ、ルヴァン杯だけでなくリーグ戦でも活躍の場は訪れるかもしれない。

 

「この早いタイミングで決めることにさまざまな葛藤があった。それでも高いところで挑戦したいという思いが強かった。起用法に関してはどこでもできることが強みなので。コンスタントに与えられたポジションで試合に絡めるようにしたい。自分の強みは、何かすごくここが長けているというところはないけど、苦手なところが少ない。どの部分を切り取ってもコンスタントにプレーできる。戦う姿勢、球際は一番の特長だと思っている」

 

 

 青森山田高では、松木と10番とエースの座を争った。再びその後輩と同じユニホームに袖を通す。安斎は冗談交じりに「また玖生かという見え方もあるけど」と言い、こう続けた。

 

「一緒に戦って、あれだけトップトップで戦った選手でもある。実際に大学に入ってからも玖生の活躍も見てきた。また一緒にやれるというよりも、新たな玖生と一緒にやれるという新鮮な気持ちがあります」

 

 歩んできた道のりには、いくつもの壁があった。それを泥くさくよじ登ってきたのだろう。松木とは違った自分の見せ方や、魅力がある。ただ、ちょっと面白いのは「どんな選手になりたいか?」という質問の返しだった。

 

「チームを勝たせられる存在には常日頃からなりたいと思っている。自分のプレーで見ている人を熱くさせたり、勇気や活力を与えられる選手になりたい」

 

 その聞き覚えのある答えが、また熱い競演を予感させる。「何かの縁」だという青赤で、安斎が第一歩を踏み出した。

 

 いまは口にしなくてもいいし、これはあくまで個人的な思いだ。もう一度青赤で10番をという希望を心のどこかに持っていてほしいな、と。そう期待せずにはいられない。

 

 

 

text by Kohei Baba

photo by Kenichi Arai

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