「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

【無料掲載】改修したばかりのグリスタの芝が枯れるという謎。【トピックス】(20.6.18)

 

▼今オフ、2億6千万円もかけて改修した芝が……

リーグ戦再開がもうすぐそこに迫っている。いよいよ改修されたグリスタの新たなピッチを目にすることができる――。期待は膨らむばかりだった。

ところが――。

グリスタの芝が枯れていた。以下の写真は6月10日に栃木SC関係者が撮影したものだ。確かに一部の芝が黄色に変色して枯れているように見える。

 

写真は栃木SC提供

 

事の発端はこうだ。

6月10日、栃木SCのトップチームが紅白戦を実施するため、今季初めてグリスタを訪れたときに芝の劣悪な状態が判明した。グリスタの芝は今オフ、県が2億6千万円の事業費をかけて改修したばかり。にもかかわらず、ところどころ枯れた芝が入り混じり、ピッチに凹凸ができてしまっていた。

栃木SCがすぐに県のスポーツ振興課に確認すると、すでに6月上旬には芝が悪化している状態を察知し、専門家に調査依頼をかけていた。この専門家とは、日本のスポーツターフの維持管理のスペシャリストで、昨季、初めてグリスタの芝に応急処置的に手を入れ、何とかシーズンを乗り切ることに一役買った人物である。

今後、6月19日にこの専門家、県、栃木SCが立ち会うなか、グリスタの芝の調査を実施することになっている。

栃木SCの橋本大輔代表取締役社長は芝が枯れた原因について「現時点でわからない」ため、19日に実施される専門家の調査結果について「県に原因と改善計画の開示を求めている」とした。

 

ここに来て、まさかの再燃となったグリスタの芝問題。コロナ禍によりリーグ戦が中断し、十分な養生期間を確保できたグリスタの芝だが、なぜ枯れたのか。

風通しが悪いとされるグリスタの構造的環境、改修時のビッグロール工法という新たな施工法、維持管理の手法やクオリティ――。様々な角度から問題点の指摘がなされている。

ただ、筆者は取材を通じて十数年前のグリスタの芝が年間通して青々としていたことを知っている。風通しの問題があるならば当時から問題が生じていたはずだ。また、ビッグロール工法は日本でもすでに汎用性の高い工法として各会場で取り入れられており、今回は、必要な養生期間も十分に取っている。

これらを踏まえれば、より疑念を持たざるを得ないのは、維持管理の手法やクオリティ、と考えるのが自然ではないだろうか。

 

客観的事実も書いておきたい。

昨季、前出の専門家が年間を通して手を入れたグリスタのピッチは、最悪の状態の一歩手前で何とかシーズンを持ち堪えていた。長年、土壌に問題があるとされてきたグリスタの芝も、スポーツターフのスペシャリストの綿密な計画に基づいた精度のある維持管理にかかれば、一昨季のような最悪の状態に陥ることは避けられると証明してみせたと言える。

今季、その専門家はお役御免で持ち場を離れている。改修されたグリスタの芝の維持管理を既存の業者に任せて去っていったのだが、そうして、再び芝は枯れてしまった。

6月16日付けの下野新聞で、県スポーツ振興課がグリスタの芝の現状について「冬芝から夏芝に生え変わる時期だが、夏芝の生育状況が芳しくない」としているが、この点も取材を進めれば、維持管理の手法や精度次第でどうにでもなる、との見方は決して少なくない。

現在、グリスタの芝の維持管理を担うのは、グリスタの指定管理者である北関東綜合警備保障株式会社から委託を受ける県内の造園業者だが、スポーツターフの維持管理は専門ではない。しかしながら、この会社がこの10年間、グリスタの芝を維持管理してきた。結果はご覧のとおりである。

橋本社長は次のように話している。

「芝は生き物なので情熱を注がないといけないと思うんです。僕がこれまで会ってきたスポーツターフを扱っている人たちは情熱をもって芝を管理しています。その情熱がないまま維持管理に当たれば、また同じことが何度も起きてしまう可能性があると思います」

 

今後は19日の専門家の調査結果を待ち、未定となっている3節東京ヴェルディ戦の試合会場を選定することになる。

選手たちが安全にプレーできることが確認できればグリスタ開催、難しいと判断されれば県外開催(熊谷など)か、カンセキスタジアムとちぎでの開催を模索する。なお、カンセキスタジアムとちぎはコロナ禍の影響もあり、県からまだ使用許可が下りていないため、3節に強行的に使用する場合は早急な対応が必要になるという。

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