「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【新東京書簡】第三十七信『<続>観客動員を考える』後藤(18.4.26)

■新規客を掴む参加性を!

最近、仕事の都合で、小学生男子向けのホビーに関するイベントを視察または取材に行くことがある。先日もとあるコンテンツの日本一&アジア王者決定戦を観に行ってきた。このコンテンツはプレーヤーがガチであることで有名で、おそろいのシャツやジャージをこしらえてサークルで活動しているところも多い。そういう大会参加上位者とは別にもちろんギャラリーとしてイベントを観に来ている子どもたちもおおぜいいる。

本来は男子向けだけど、女の子の姿もあった。無料イベントだから開催費で足が出そうなものだけど、そこはよくできたもので、会場と同一施設内のお店で関連商品を買ったレシートを持っていくとスロットゲームに参加できるようになっていた。直接的な資金回収ではないけれど、販売促進につながっている。

大会が始まる前には、一般の子どもたちにも、ステージ上でダンスに興じたり、エキシビションマッチを戦ったりと、参加する場が与えられていた。とはいえ、なんだかんだでシャイだから、みんな出ていきにくいよね。そこで、あからさまにモノで釣る。参加してくれたら当日限定のこれこれをプレゼントしますよ、と。すると「はいはいはい!」ってものすごい勢いで手が上がる。

露骨に物欲なんだけど、でもね、おとなの場合は転売とかが絡んで不純な欲がまじってるけど、子どもだからすごく純粋に欲しがってるわけ。そこは清々しかったね。

参加する場が用意されていて、参加する動機がある。子どもたちが積極的に関わろうとするコンテンツを常に生み出していかないと業界が廃れてしまうから、おとなの側の真剣度が高いのは当然だけど、それにしても競技化するくらいの作品をホビーだ漫画だアニメだと展開してきちんとビジネスにしていく手腕には戦慄をおぼえた。そしていま、小学生の男の子の興味は“ここ”に注がれているんだな、ということを実感した。

ホビーやゲームの分野では、子どもの興味を引くべく全力を注いでいる。子どもが育つと親御さんになり、次の世代の子どもたちにおもちゃを買い与える顧客になる。サッカーはそうなっているのかな?

FC東京の場合、Jリーグ全体と同じで、ファンが高齢化する傾向にあるようだ。でも若年層を取り込む云々以前の状態かな。海江田さんが言っていたように、長期的には頭打ちだったところに、短期的には過去二年間の不振によって、今シーズンは観客動員が減少している。新しいファンを取り込むよりも、もともと存在する東京ファンを呼び戻す、あるいは関心はあるけどあまり会場に脚を運ばないライトなファンに来場してもらう頻度を高める、といったことが必要になっている。

それは、長谷川健太監督率いることしのチームが強くなることである程度解決できると思う。実際、平日のナイトゲームなのに、4月11日のJ1第7節(vs.鹿島アントラーズ)では17,260人、25日の第10節(vs.サンフレッチェ広島)では雨まじりの天気ながら13,425人が集まった。

問題は子どもをいかに呼ぶか。プレーヤーの子どもをスクールあるいはアカデミーに誘引する努力はしていると思うけれど、それ以外に、子どもの観客を増やすための大胆な施策が必要だと思う。キーワードは参加性。どうやって参加性を高めるか、頭をひねらないといけない。

 

『トーキョーワッショイ!プレミアム』後藤勝

 

前のページ

1 2
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ