「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【インタビュー】A Secret on the Pitch ピッチは知っている〈1〉 岩清水梓(日テレ・ベレーザ)後編(2016/07/08)

試合後、スタンドからの声に手を挙げて応える。

試合後、スタンドからの声に手を挙げて応える。

■若手を怒るなら、こっちも怒って

――女性に年齢の話をするのもどうかと思うんですが、岩清水選手は29歳。僕は女子サッカー選手と女性のロックミュージシャンが重なって見えるんですよ。誰だったか憶えてないんですが、「女の子が30を過ぎてロックをやるのは大変なのよ」と。僕は男ですが、わかる気がしたんですね。男の30とは、やはり捉え方が違うんだろうな。
「ボーダーラインではありますね。30になったのを機に身の振り方を考えるというのはよく聞きますし」

――自分より先に後輩が辞めることについては、どう感じるんですか?
「さみしいですよ。最近、経験することが多い。自分の場合、10年以上クラブと代表の過密スケジュールにもまれて、ここまでやってきました。環境が続けさせてくれた面は間違いなくあると思います。代表に絡まなかったら、ここまでやっていたか。だから、これから先のこともやってみないことには想像しづらい」

――あれ、どうしてこんな話に。僕は、ベレーザには岩清水梓がいるよ、スタジアムにおいでよ、と書きたかっただけなのに。
「チームに貢献できるうちはやりますよ。スタメンに絡まなくなり、寄与できることが少なくなってきたときは引き際でしょう」

――小娘たちよ、私の壁を越えてみろ!
「言われるうちが花。怒られて、なにくそと思える時期が大切。それは、つくづく思う。ベテランになると、言われなくなるんですよ。その状況に物足りなさも覚える。指導者の方には、思っていることあったら言ってほしい。若手を怒るならこっちも怒ってと思っています」

――ヘンに気を遣うなと。
「気を遣われるのは好きじゃない。試合中は自分の判断でやっているから、ベンチから言われたらカチンとくるんだけど。そのへんの厳しさを要求する以上、飲み込み方は考えておかないと。かつて、ベレーザが何連覇もした時代、自分は若手のひとりでした。再び、群を抜く強さを持つチームになりたい。そうなれる要素はあると思うから、そこに挑戦したいですね」

――考えていることのスケールがでかい。なでしこの中核を、再びベレーザが占める。
「いまの若い子たちが自分たちのあとを継ぐ。きっと、実現させてくれますよ」

 

新監督にベレーザOGの高倉麻子が就任し、新たな航海に出るなでしこジャパン。5月20日に発表されたメンバーリストに、岩清水梓の名前はなかった。
苦難を経て、サッカー人生の新局面を迎えつつある岩清水は、はたしてどんなプレーを見せるのか。今季のベレーザが頂点に立ったとき、その仕事ぶりを再評価する声は高まるに違いない。

 

◎岩清水梓(いわしみず・あずさ)
1986年、岩手県生まれ。大沼SSS‐NTVメニーナ‐日テレ・ベレーザ。素早く危機を察知し、身体を張ったディフェンスでチームを支えるセンターバック。ヘディングに強く、セットプレーでは「イワシヘッド」が炸裂する。なでしこリーグ、ベストイレブン10回。国際Aマッチ122試合11得点。各年代の日本代表に選出され、2006年になでしこジャパンデビュー。以降、代表に欠かせない選手のひとりとして、2011年のFIFA女子ワールドカップ・ドイツ大会の優勝をはじめ、数々のタイトルを獲得した。

【告知】
●次回ホームゲームは、7月24日(日)。なでしこリーグ1部第8節、伊賀フットボールクラブ戦@BMWスタジアム、16:00キックオフ。

●ベレーザ創部35年記念誌 『ベレーザの35年 日本女子サッカーの歩みとともに』が発売中だ。ベレーザOGや現役選手のインタビューのほか、歴代監督の座談会、記録集など充実の内容。限定1000部で、価格は1620円(税込み)となっている。ご購入は東京ヴェルディ オフィシャルウェブストアまで。

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