「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【インタビュー】A Secret on the Pitch ピッチは知っている〈1〉 岩清水梓(日テレ・ベレーザ)後編(2016/07/08)

ピッチを軽やかに疾走する岩清水。

ピッチを軽やかに疾走する岩清水。

■チームのメカニズム

――そういった苦難を乗り越えて、サッカー選手はまたひとつ階段を昇る。
「そうだと思いますけど、自分の場合、わりとベテランでそれを経験したんですね。若手の頃はそれほど打ちひしがれる挫折をせずに」

――ここまで、すいすいきました?
「それなりに苦労はしたと思いますが、一段一段、落ちることなく昇らせていただいた感じです」

――国際Aマッチ122試合11得点。現在、代表についてはどういった気構えを?
「代表引退ってヘンだと思うんですよね」

――そういや、リオ五輪最終予選のあと、その話題が新聞報道で取り沙汰されたことも。
「見た、見た!」

――宮間あや選手、あと阪口夢穂選手も引退を決意。
「彼女たち、ひと言も言ってないからね」

――そうだったんだ。僕は、あの阪口選手に限ってないはずだと思いつつも。
「次の日、朝食会場のスポーツ新聞を見て、何これと目を丸くしていました。さておき、代表は選ばれる場所。4年後を見据えた選出になるだろうから、どこかで覚悟をしつつ、でもあきらめることはないです」

――澤穂希さんのように、きれいに幕引きできる人はまれですもんね。僕はこんな終わり方はあんまりだなあと思ったものですから、どこかのタイミングで下に受け継がせ、区切りとする機会があることを望みます。
「いまベレーザでもその役割だと思ってますし。もし自分が代表に関わることで、何かの役に立てるのだったら喜んでやります」

――チームのメカニズムについて聞かせてください。好循環と悪循環はどんなふうに生まれるものですか?
「どうなんだろう。チームがうまく回るときは、なんだかんだで結果がついてきて、大会の最初はバラバラだったとしても、最後はいいチームになっていく」

――いいチームだから結果が出るわけじゃないんだ。
「大会中にまとまっていくんですよ。思えば、今回のリオ五輪予選みたいに初戦で負け、そこから立て直すことはほとんどやってこなかったですね。アジア予選をぎりぎり勝ち抜き、本大会も苦しい勝負を1‐0でものにしながらチームが成長していったと思います」

――歯車が狂うときはどんなことが?
「結果を出せずにいると、自分のやりたいプレーを抑えきれなくなる。代表では、それぞれの所属チームでやっているプレーとは違うことが要求されます。それがストレスになって言葉に出てきちゃうような」

――きつく聞こえる言葉も、その人の言い方次第ってところも。
「そうそう。チームスポーツなんで、気の遣い方は大事なんですよ。そのズレが重なっていくと修正は難しくなる」

――ところで、岩清水選手はボールを蹴ってない自分にリアリティが湧きますか?
「それをね、最近考えだしました。セカンドキャリアというワード。何がいいんだろうかと」

――たとえば、指導者。
「向いていると言ってくださる方もいますが、自分ではそうだろうかと確信は持てません。最近になって興味はちょろっと出てきたかな」

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