「ゼルビアTimes」郡司聡

黒田剛監督「30年近くの中で学んだこと、経験してきたことが今年1年に全て集約されたような形になった」+柳下正明監督、小島雅也【ツエーゲン金沢戦/試合後会見コメント+α】

■明治安田生命J2リーグ第40節
10月29日(日)14:00キックオフ
町田GIONスタジアム/11,181人
FC町田ゼルビア 1-0 ツエーゲン金沢
【得点者】町田/3分 平河悠

古参メンバー3人衆のシャーレアップ…

○黒田剛監督
–まずは試合の総括をお願いいたします。
「試合前日の時点で他会場の結果によってJ2優勝というニュースが入ってきましたが、難しい試合になりました。立ち上がりのゴールがより硬さを生みましたし、守勢にさせてしまった傾向がありました。ただクリーンシートで勝ち上がるというわれわれの志向してきたサッカーをハーフタイムにもう一度確認し合い、選手たちが実践してくれることでなんとか1-0で勝つことができました。振り返れば春先にJ2優勝・J1昇格を掲げ、コンセプトやベースを確認しながらここまで積み上げてきました。またエースのエリキの離脱や招集される代表選手が多かったといった、いろいろな事情がありながらも、なかなか自分たちの思うような展開に持っていけなかったことは歯痒かったですが、その中でも選手たちが奮起をして、パワーをつけて臨んでくれました。

またどのチームよりも、われわれの日常が絶対的に勝っていると、自信を持って試合に臨ませたことが、1-0という一番理想的な形でこの試合を締めくくることにつながりましたし、この結果をうれしく思います。さらにホーム最終戦には多くの方々にご来城いただき、その中でセレモニーを通じて、感謝の言葉を伝えることができました。長年支えてくださったファン・サポーターのみなさんにとっては、待ち望んだ優勝だと思います。こうしてクラブの歴史に1ページを刻めたこと、また来年にはJ1という新しい舞台で戦えることを本当にうれしく思います。選手たちには今日が来年のスタートだと伝えていましたが、FC町田ゼルビアという名前をJ1のステージに轟かせるように準備をしていきます」

 

–あらためてJ2優勝を成し遂げることができた要因は?
「1年間を通して数多くの選手を起用してきましたが、その中でメンバー外の選手たちが口をそろえていたのは、「昔の自分だったら愚痴を言ったり、頑張らない自分がいたかもしれないけど、今年はメンバー外であっても、みんなで戦っているという仲間意識を共有できていた」ということです。ネガティブな思考を持つ選手がいませんでしたし、試合に出るタイミングでは「絶対に活躍しよう!」と、そういう気持ちをひしひしと感じることができました。

その結果、全員でJ1昇格を、J2優勝を勝ち取れました。そしてもちろんフロントも含めて、クラブが一枚岩になって目標達成に尽力してくださったことが、こういった結果を導いたんだと思います。選手をはじめ、フロント、スタッフ、スポンサーを含めて、みんなの勝利だと思います」

 

–青森山田で経験してきたことをプロの世界で生かし、結果につなげたことについて。
「高校サッカーでは結果を残してきましたが、経験したものがプロの世界で通用するか、私自身も不透明でしたし、通用するのか、通用しないか、疑う意見もあったと思います。ただそういった声が逆に私のモチベーションとなり、パワーとなりました。「見返してやろう」「ここで結果を出そう」という気持ちにさせてくれたのも、青森山田で28年間監督をやってきた末の気持ちだと思いますし、教員としてやってきた分、人に物を伝えることや、または選手たちに実践させることはあらためてプロになっても通用するんだと実感しました。

またはその言葉をしっかりと選手たちが理解し、実践してくれたことが今年1年間の成果になったと思います。教員時代には諸先輩方にいろいろなことを教わり、いろいろな体験をさせていただいたことがこうした結果をもたらしたと言えると思うので、感謝しています」

 

–黒田監督はファン・サポーターのみなさんのことを「家族」と表現されてきました。そう思う理由を聞かせてください。
「町田のファン・サポーターのみなさんからは応援、声援、激励以外の言葉を聞いたことがありません。他チームにブーイングをすることもなく、自分たちのチームに矢印を向けながら応援してきました。ファミリーとは常にそういうものであって、仲間意識を持って激励し、褒め続けてくれる、そういったみなさんのことはファミリーだと思っています。FC町田ゼルビアのファン・サポーターのみなさんは心強いですし、どんな時も休まずに背中を押してくれる。他クラブにはない彼らの思いを感じた分、選手たちも走れたと思うので、ファミリーという言葉が適切だと思っています」

 

–プロ監督になってからの自分自身の変化やこれまでとはアプローチを変えた部分はありましたか。また青森山田出身選手の3選手(バスケス・バイロン、宇野禅斗、藤原優大)の変化はどう捉えていますか。
「プロ選手たちはサッカーを職業としているわけですから、育成年代の選手とは違います。養うべき家族もいますし、人生をかけて飛び込んだ職業です。彼らに寄り添いながら、リスペクトをしながら接していかなければならないため、言葉もかなり選びました。寄り添い方も高校生相手とは違います。高校生とプロが違う点は、こちらの言うことをしっかりと理解し、選手たちが即座に実践してくれること。ピッチで求めることを誠実にやってくれること。それはやはり高校生の理解力とは違うため、「さすがプロだな」と実感してきました。

卒業生3選手に関しても、彼らに対しては何歳であろうと、高校生のような扱いはできません。一人のサッカー選手として接してきた自負はあります。3年ないし、6年間指導してきた選手が3人いますから、親心のような気持ちを持ちながら、そして歩み寄りながら、コソッとアドバイスをする一面もありました。彼らも優勝を経験し、青森山田で勝ってきたことが今後のJ1というステージで生きるでしょう。またどうなるか分かりませんが、別の道になったとしても、成功してくれることを恩師としては願っています」

 

–青森県民の方々も応援していました。県民の皆様にメッセージをお願いいたします。
「29年前に右も左も分からず出身の札幌から青森に飛び込みましたが、苦労はしましたし、18人の部員からスタートしたので、自分の中でもこの場にこうして立っていることは想像できませんでした。いろいろな先輩方に育てていただき、いろいろな経験をさせていただき、そして何よりもかわいい教え子たちと出会い、そこで培った物や学んだことはたくさんあります。

大きく言えば、この30年近くの中で学んだこと、経験してきたことが今年1年に全て集約されたような形になりました。またそういった経験をこのFC町田ゼルビアというクラブに還元できたと思います。この30年は無駄ではなかったですし、青森で応援してくださる方々がいたからこそ、今回の結果に結びついたと思っています。ありがたい気持ちでいっぱいです」

 

○柳下正明監督
–まずは試合の総括をお願いいたします。
「立ち上がりに失点をした場面は今までもずっと指摘してきたマーキングの距離が遠かったですし、多少イレギュラーな形でしたが、先にやられてしまいました。それはシーズンを通して、なかなか変わらないことでした。残念な入りでした。ただそのほかの場面は自分たちのミスからピンチはあったものの、怖がらずにボールを奪いに行ったし、相手ゴールも目指したので、残り2試合、最後まであきらめずに戦わせるようにします」

 

–序盤、ディフェンスのミスがありました。
「0-0の時はそうでもなかったと思いますが、0-1になってからは多少バタバタしたかなという気はしました」

 

–前半から町田の左ウイングバックの背後のスペースを突く形が目立ちました。
「シーズンを通して取り組んできたことでした。分かっていても難しいことがあって、相手にとっても分かりやすい部分はあったと思います。CBからもう一つボールを動かしてから進入するとか、ライン間も使うとか、そういう場面は作れていたと思います。奥田晃也がフリーな状況もあったので、奥田を使った後に得点までつなげられなかったことが残念です」

 

–相手は優勝が決まった状況での試合に向けて、選手たちにはどんな声を掛けたのでしょうか。
「休み明けにはなぜサッカーをやっているのか。なぜやり始めたのか。楽しいから面白いから好きだから、サッカーを通してうれしいこともあっただろうと。そういうことを思い出してサッカーをやろうと話しました。今日も勝ってはいないですが、負け始めてからは相当苦しんでいました。前節が終わった後もツラい思いをして悲しい気持ちをしている様子が大きかったので、それを忘れてサッカーの楽しさ、サッカーを始めたころの気持ちを強く持って、試合に臨もうと話しました。立ち上がりのプレーがなければかなり自信を持ってやれたんじゃないか。相手の強みと狙いどころはハッキリしているので、選手たちも対応していましたし、結果が残念です」

 

–平河悠選手のCF起用は金沢視点ではどうだったのでしょうか。

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