「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

いわきにあって栃木にないもの。強度不足の正体。【J2第12節 いわきFC戦 レビュー】(24.4.29)

2024明治安田生命J2リーグ第12節

2024年4月28日14時キックオフ カンセキスタジアムとちぎ

入場者数 6,434

栃木SC 0-1 いわきFC

(前半0-1、後半0-0)

得点者:28分 谷村海那(いわき)

気温 27.9℃
湿度 35%
ピッチ 良

<スターティングメンバー>

GK 27 丹野 研太
DF 17 藤谷 匠
DF 33 ラファエル
DF 5 大谷 尚輝
MF 24 神戸 康輔
MF 7 石田 凌太郎
MF 19 大島 康樹
MF 42 南野 遥海
MF 6 大森 渚生
FW 15 奥田 晃也
FW 32 宮崎 鴻
控えメンバー
GK 1 川田 修平
DF 40 高嶋 修也
MF 10 森 俊貴
MF 20 井出 真太郎
MF 41 朴 勇志
FW 38 小堀 空
FW 9 イスマイラ

63分 大島→小堀
63分 大森→森
73分 神戸→朴
73分 宮崎→イスマイラ
90+2分 南野→井出

 

▼ボールを奪い取ることを突き詰められていない

たいそうなタイトルを付けてしまったが、たいした話ではない。これまで露呈している課題をそのまま露呈したという試合だった。

強度不足。いわきに強度で上回られ、先制ゴールを許し、そのまま押し切られた。

攻撃も守備も色々な問題点があるかのように思える状況だが、まったく難しくない。

 

明確に、強度不足になる原因がある。

ボールの奪いどころが共有できていない。

この一点だけだ。

そしてこの一点は、田中誠監督が就任記者会見のときに高らかに宣言したことでもある。

「ボールを奪いにいくこと、誰がファーストディフェンダーとして奪いにいくのか、それをもっと明確にして、自分たちでボールを奪い取ることをより突き詰めていきたい」

しかし、これができていない。田中監督は去年の守備ベースに上積みすることが求められ、監督に就任した。だが、開幕から12試合を消化したが、これができていない試合がかなり多い。

 

立ち上がりは互いに背後にボールを送り込みながらやり合ったが、20分を過ぎたあたりからいわきペースになった。

まず、自分たちのショートCKを相手に引っ掛けてカウンターを食らったり、自分たちのGKキックのターゲットが奥田になってしまったり、自分たちのミスから攻撃をやり切れないシーンが散見し始めた。

 

そうして、冒頭に書いた課題を露呈し始め、先制ゴールを奪われるという流れだった。

24分、25分と立て続けに、奪いどころが定まらずに裏返されて押し込まれる、というシーンを作られている。

 

前から奪いにいく、外されるようにロングボールを入れられる、相手FWとの競り合いでCBが大きく弾けない、セカンドボールをいわきに前向きに回収される(アンカー神戸は前に奪いにいかないといけないので3CBの前に誰もいない)、いわきが前進する、栃木は自陣に後退せざるを得ない。

これが短時間で2シーン続いた。そうして押し込まれた流れから28分、相手のリスタートのセカンド攻撃から失点した。クリアが中途半端になり、クロス対応の際も緩かった。

 

前から奪いに行くときのアプローチスピード、球際の強度も中途半端。いわきの後ろの選手たちがプレッシャーに感じておらず、ゆうゆうと狙ってロングフィードを入れることができている。

そして、入ってくるボールに対してもCB勢の対応が中途半端。アラートさがない。メリハリがない。勢いを持ってボールにいくでもなく、相手FWに抱えられるようにハイボールに対処し、弾けず、落ちたセカンドボールを相手に回収されている。

 

2試合前の水戸戦の同点被弾のシーンもそうだった。FW寺沼に入ってくるボールをCB勢が潰せず、前を向かれ、シュートを強振されてゴールに繋げられた。

 

前から行くならば前にコンパクトを作って前で奪い切る。それだけの迫力を出す。

前で奪えないならば行かずに、ミドルゾーンや後ろにコンパクトを作る。

どちらかをはっきりと選択しないといけないが、これができていない。

今季は開幕2連敗を喫したあと、全体の繋がりを意識しなくてはいけない、という危機感を共有した甲府戦(〇2-1)や横浜FC(〇1-0)にはそれがあった。

 

奪いどころをしっかりと共有し、前線のスイッチに連動するように全体が動く。全体が強固に繋がる。

全体が繋がれないから、全体の距離感が空いてしまい、だから球際やセカンドボールに対する強度を発揮し切れない。距離が広いからだ。あくまでコンパクトを作り、そこで強度を発揮しないといけない。

 

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