「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

矜持とするインテンシティが2ゴールとクリーンシートに昇華した夜。【天皇杯3回戦 サンフレッチェ広島戦 レビュー】(23.7.13)  

天皇杯JFA第103回全日本サッカー選手権大会3回戦

2023年7月12日19時キックオフ カンセキスタジアムとちぎ

入場者数 2,552

サンフレッチェ広島 0-2 栃木SC

(前半0-0、後半0-2)

得点者:54分 大島康樹(栃木)、90+4分 西谷優希(栃木)

天候 曇
気温 29.6℃
湿度 48%
ピッチ 良

<スターティングメンバー>

GK 1 川田 修平
DF 6 大森 渚生
DF 23 福島 隼斗
DF 40 高嶋 修也
MF 3 黒﨑 隼人
MF 13 植田 啓太
MF 21 吉田 朋恭
MF 24 神戸 康輔
FW 10 森 俊貴
FW 19 大島 康樹
FW 45 安田 虎士朗
控えメンバー
GK 25 青嶋 佑弥
DF 16 平松 航
MF 36 山田 雄士
MF 7 西谷 優希
MF 8 髙萩 洋次郎
FW 27 五十嵐 理人
FW 37 根本 凌

36分 植田→西谷
46分 黒﨑→平松
67分 安田→根本
71分 森→山田
90+6分 大島→髙萩

 

▼高強度を90分間維持

何が良かったって、高いインテンシティの試合を続けられたことが良かった。

仙台戦(△2-2)に引き続き、この広島戦(〇2-0)も非常にインテンシティが高かった。そして、今度はきっちりと勝ち切った。

 

前線からハイプレッシャーに行けば、相手が苦し紛れに入れてくるボールを後ろが潰して回収した。その連続だった。

CBの中央に入った高嶋が序盤、相手の最終ラインから1トップに入れてきたフィードを被ってしまった。前掛かりの意識が裏目に出たシーンだが、本人は内心「焦った」そうだ。だが、その後は落ち着いて対応できていた。

高嶋はとにかく相手の1トップにボールを収めさせまいと強烈なまでの出足をみせて前で潰せていた。次第に相手1トップのナッシム・ベン・カリファが苛立ってきてイエローカードを提示されることになるが、高嶋の粘着的なハードプレスが効いていたのだった。

高嶋が中に入ってくるボールにチャレンジし、両脇のCB勢がカバーするようにボールに身体を滑り込ませて回収していく。

試合後に時崎監督が「奪ったあとの質」を指摘しているとおり、永遠の課題かもしれないが、この精度がなかなか付かなかったことで、回収したボールから決定的なチャンスを作り出すまでには至らなかった。

ただ、1トップの大島が背後に抜け出す動きに対し、中盤の植田や安田からボールは出ていた。8分には背後に抜ける大島に対して植田から浮き球のボールがピタリと合い、DFラインの背後を取った大島が柔らかいトラップで止めてシュート体勢に入ったが、広島DFがきっちりとコースに入ってブロックした。結構なチャンスだった。

植田も、安田も、大島に対して背後へのボールと足下へのボールを使い分け、受ける側の大島も柔軟に使い分けながら前線で起点を作れていた。

 

大島は1トップ起用されるのは4年ぶりとのことだが、さすがにこなれていた。そもそも柏U-18時代から当時の世代のFWでは群を抜いた存在であり、栃木から群馬にレンタルで出ていた18年にはJ310ゴールを奪ったFWなのである。

ワンタッチゴーラーというフレーズが象徴しているが、最終的に自身がワンタッチでゴールが奪える場所にボールを引き出しながら、そこに必ずいる、というのが大島だった。剛のFWがいれば、柔のFWがいて、大島は間違いなく後者だが、そういうタイプの面白さを見せつけた夜だった。

大島自身は「ゴールに専念するという意味では1番ゴールに近いし、今日も前半は結構なチャンスがあったし、あれが自分の特徴です。そこで1点、2点を決めて行けば自分の価値は上がると思います。シャドーで出てもゴールに向かう姿勢は大事なんですが、動き出しという意味では1トップのほうがやりやすさはありますね」と振り返っており、手応えを感じさせた。

栃木では長らくポリバレントな能力を売りにしてきたが、周りにパサーがいることが大前提ではあるが、大島の1トップ起用は面白かった。その攻守における立ち位置、背後を取る動き出しのタイミング、それから守備でスイッチを入れるタイミングなども、妙にこなれていた。

結局、先制ゴールに繋がるペナルティキック獲得は大島個人で何とかしてしまったのだが、相手ボールを背中からえぐるようにプレッシャーを掛けたこともプラスに出た。

試合前には時崎監督のほうから「お前は何で価値を示すんだ」と熱を入れられていたようだが、それも大島の背中を押していた。

 

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